拾弐

晴明の父は
晴明の体が欲しかったのだ

それには式神が邪魔だった
祭具を使い、血の繋がりを使い、実の子供である晴明の生から死までを全て利用しようとしたのだ

そうまでして、子を犠牲にして
関係の無い一族までも巻き込んで
あの女陰陽師の夢を叶えたかったと


あの仮面、鬼頭は呪われた祭具
その仮面をつければその存在は抹消され、名前を呼ぶ事も、記す事も許されない


「■■…」


仮面を剥がれ
血にまみれた

愛しい男の名前を
私は呼ぶ事が出来なかった


「昼子!どうせ見ているんだろう!面を貸せ!」

「そんな物騒な言い方しないで下さいよ〜」


この女、物腰の柔らかさとは裏腹に黒い腹を持つのだが
やはり最初から全て見ていたようだ

私の呼び出しにあっさり応え
その身を表した


「■■を育てた責任は私がとる。こいつは天界で引き取るぞ
この一族の呪いはそれで解けるだろ?」

「えっ?!育てたってなんですか?!
それにしてもまた無茶を…」


何だ、知らぬふりをしているのかと思いきや本当に知らなかったのか

しがない女神の動向を探る程昼子も暇ではなかったか
八百万の神とはよく言うがこの時ばかりは神の数が多いが故に■■の存在を隠せて良かったと思った

巻き込んだ一族には詫びを入れ
私は早々に天界に引き返した


あの一族には神として何一つ力になれなくて申し訳ないが
せめて以後、干ばつに悩まされた時は力になろう