拾壱

晴明は自らの悲願のため、ある一族を皆殺しにしたらしい

一族を皆殺しなど、神でもそうしない
恐ろしいものだ
人身御供など何の利益もないなど晴明もよく知っているだろうに

彼は私に見ていて欲しいと言った
自身の悲願達成を
そしてまだ見ぬ自身の出生の秘密を私と共に見たいのだと

その為に呼んだと


程なくして四人の人物が宮殿の奥に現れた

晴明の母に、巻き込まれた一族か

晴明の母は鬼を狩る陰陽師である
巻き込まれた一族も神と交わり神をも越える力を持つとは天界でも噂だ

雨を降らせる程度しか能のない
しがない女神の私に出来る事などなかろう


神らしく、高みの見物としゃれ込もうか


晴明の式神は扱いが難しいものが多く
最後までその扱いに困っていたのがあのアスラだ

つくづく蜘蛛にはいまいち良い思い出がない

神として、私はどちらを応援したものか

晴明は実の母と対峙しているのだ
私くらいは
無条件で晴明を愛しても罰は当たるまい


しかし私の願いは空しく
晴明は破れた

そして彼の口から出たのは驚くべき事実だった


彼は死にたがっていたのだ
自身の人生に幕を閉じる、その役目を実の母にやらせようとしていた

冗談じゃない
誰が貴様を救った
誰が貴様を育てた

誰が晴明を愛した

そのような勝手は神が許さない

親子の会話など知らぬ
その血塗れの晴明の体に手を伸ばそうと駆け寄った

その時だった


あの仮面が
晴明を襲った