火遊びしませんか?

「君、本当に色白いな
ちゃんと生きてる?」

「失礼だな」


夏真っ盛り
私たちは今プールに来ている


「そういうお前も不健康そうな体をしてるな」

「…締まりなくて悪ぅございました」


高校最後の夏休み
クラスメイトの立花仙蔵に誘われてやってきたプール
色白を通り越して生きているかさえ不安になる彼の肌に驚きながらも
私たちは夏を満喫していた

ウォータースライダーのいつもより近い距離に今更ドキドキしてみたり
水も滴る何とやらと言うが立花仙蔵という男は本当に顔が整っているのだなと再認識したり

このつかず離れずな私たちの関係は卒業してからも続くのかなとか
少しだけ切なくなってみたり


「ほら、買ってきたぞ」

「ありがとう、お金払うよ」


手渡されたのは早々と暑さで溶け始めた手持ちのアイス
滴る汁が床に落ちる前に素早く口に含む

口に広がる冷たさが心地よい


「これくらい気にするな」

「いやいや、昼も出して貰ったしね?」

「なまえは男を立てるという事を覚えるんだな」

「申し訳ないんだけどなぁ」


一度出した財布を再びしまい
小さくぼやいた


「おい、私にも一口寄越せ」

「…それが目的か」


思いっきりくわえた後に言われても遅いよと一言断りをいれ
念のためそっと彼の前にアイスを差し出すと
そっちじゃないと言うや否や

私の口元と立花君の口が重なった


「…っなな、っな…」

「もう一度言っておく、男を立てるという事を覚えろ
なまえ、私と付き合え」


こんな状況で
そんな事

首を縦に振る以外の選択肢がどこにあると言うのだ