籠の鳥

※連載設定


私の好きな人はこの時代の人間ではない

もう二度と会えないと思っていた
けれど再び会う事が出来た

奇跡だと思う
神様の存在なんて信じた事無かったが
これからはもう少し信仰心を持とうと思った


「雑渡さん」


彼女の声はとても心地よい
私のような男を受け入れてくれて
あまつさえ私を愛してくれた

こんな体になった時
人並みに恋をする事など
誰かを愛する事など
愛される事などもう叶わないと思っていたのに


「私、本当の穀潰しになってしまいましたね」


彼女は布団の上で
無理矢理笑った


私は彼女を手放したくなかったのだ
どんな手段を使ってでも


「親御さんは悲しむだろうね、こんな姿を見てしまったら」


私のその一言で
彼女は泣き崩れてしまった


「大丈夫、私が守って、養って、一緒に生きてあげるから
こんな体の私を愛してくれたように
どんな姿になっても私はなまえちゃんを愛しているよ」


私は彼女の弱みにつけこんだ

私がこの世界に戻るのを止めなかったように
彼女自身も元の世界に戻るつもりだろう

私は我が儘な事に
それを許したくなかったのだ


「君の世界でもそれは治せない?」

「…恐らく。内臓とかならまだいけるかもしれませんが
ここまで…細かくなると…」


知っているよ
だから私はこうしたんだ



なまえちゃんがこちらに来てすぐの事
私のかけた罠にかかり

彼女は足の腱を切った

ありがたい事に同時に脛も骨折したらしく
彼女は歩く事が出来なくなった

こうもうまくいくとは
喜八郎君に感謝しないと


「私は君を見捨てないよ」


泣きながら私に抱きつきすがる彼女を
愛しく思った



鳥を入れる籠はとっくに用意出来ていた

あとは籠に入れる鳥を撃ち落とすだけだったのだ