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趣味は何ですか?と聞かれて
生活と答えるのは間違いなのだと思う


「…はぁ」

「なまえちゃん、これまたおっきなため息だねー?」

「あさぎりさん…そうですね、贅沢で、我儘な悩みにため息が漏れてしまいました」


司帝国を裏切り、科学王国の仲間入りをし、早数ヶ月
ここでの生活は気に入っているし、千空さんとクロムさんの発明には日々良い刺激を与えられている

それでもため息は漏れてしまうのだ


「いえね、最初の頃は今日の焚き火はどのスタイルにしよっかな〜♪って悩んだりもしたんですよ
でも毎日となるとですね…もう昨日の使い回しでいっかってなるじゃないですか」


最初の頃は嬉々として穴を掘り、ダコタファイヤーホールを作ったりもしたが
今やその穴を使い回すばかりで新たに穴を掘る気にはなれない


「ごめん、ジーマーでぜんっぜんわかんないや
てか焚き火ってそんなにたくさん種類あるの?」

「色々ありますよ、その土地で向いてる焚き火とかありますし
しかし…分かってはいましたがいざ趣味が生活になるとマンネリ化してしまいますね
現代でも長期休暇で海外にキャンプしに行ったりしてましたがガチの石器時代だとやはり違います」


日々生きるためにする事をマンネリ、というのも些か変な気はするが
そしてこの悩みは村の人達にはとてもじゃないが言う気にはなれないし何ならこう思う事すら負い目を感じる

それもため息の原因だ


「そう考えるとなまえちゃんは今、実質無趣味みたいなもんだもんねえ
そりゃつまんないよねえ」

「つまんない、は言い過ぎですよ」


…多分
口には出さないけれどこの状況をつまらないと言うのはあまりに村の人たちに失礼だ


「でもま、千空ちゃんならきっとまたキャンプなんて趣味でーすっていう世界にしてくれるでしょ
何ならこれから村に生まれる世代は焚き火の仕方も知らないまであるかもよ?」

「そうですね、私もそう思いますよ」


今のこの生活が
早く非日常となりますように