07

「なら攻めるのは火縄銃の使えない嵐ん時だね〜」


俺が吐くのは何もかもペラペラで

薄っぺらい言葉だけ


「あ、そうだ氷月ちゃん
こう見えて俺まだ怪我治ってなくてねぇ、なまえちゃんに怒られちゃったから次からは何かあった時の為になまえちゃんも連れてくから」


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大した説明も受けぬまま、あさぎりさんについてきたらあの氷月さんをはじめ
司帝国を敵に回してました


「そんな訳で千空ちゃん、新しい科学帝国の仲間のなまえちゃんだよ〜」

「あ、あの…どうしてこうなったんでしょう…」


またあさぎりさんが不在になったかと思えば次からは私も連れていかれ
目の前で氷月さんを裏切る様を見せられ
ほむらさんの手によって小さな村は火事になり

その騒ぎの中心にいたこの少年、あさぎりさんは司さんに死んだと報告していた筈の千空さん
そんな彼達の仲間入りを私は果たすそうだ


「あのね、なまえちゃんはキャンプガチ勢でね
こんなストーンワールドでも一人で衣食住をどうにかしちゃうジーマーにワイルドな子なわけ」


どこから説明を願うか悩んでる私をよそにあさぎりさんは私の紹介をはじめた

しかしそんな簡単に受け入れて貰えるのだろうか
この惨状、私たちにも責任があるのではないだろうか


「キャンプガチ勢?何だ、もしかしてブッシュクラフターとかか?」

「おやご存じですか?
おっしゃる通り、正確にはブッシュクラフトが私の趣味です
伝わりにくいので普段はキャンプやサバイバルと説明してますが」


私の心配をよそに、千空さんは私の趣味への言及をはじめた
まさかこの世界でその単語を聞く事になるとは


「ブッシュクラフト…?」

「はい、あえて便利な物を使わず、知恵や工夫を使い極力現地調達などでアウトドアをする事です」

「サバイバルとの違いはサバイバルは状態、ブッシュクラフトは手段を指す言葉ってとこだな」


私は好きでやっていたブッシュクラフトだが
あくまで趣味の私と違い
生きる為にそれを行うこの村の人たちの前でこの話をするのは少しばかり気は引けたが
あさぎりさんの私の紹介の仕方や、千空さんの反応を見るに彼はブッシュクラフトに対して好意的な様だ


「なるほどねぇ、やっぱり千空ちゃんもキャンプとか好きなの?」

「キャンプなんざ日常科学の詰め合わせだからな
つっても俺は知識はあるが経験がないタイプだ、一人の時も相当苦労したしな
だからブッシュクラフターなんざ大歓迎だ
存分に役に立って貰うぜぇ、マンパワーそのものも貴重だしな」


聞けば千空さんはあの刀をも作ってしまったらしい


『なまえちゃんは絶対気に入るよ』


あさぎりさんの言葉は本当だったみたいだ

ここなら、私の欲しかった物も手にはいるかもしれない


「なまえ、よろしくなんだよ!
私はスイカって言うんだよ!」


しかし千空さんだけでなく、他の方もこんな簡単に私を受け入れて良いのだろいか

無邪気な子供を前に考える事ではないのかもしれないが


「スイカさん、よろしくお願いしますね」

「なまえはゲンと仲良しなの?」

「仲良し…どうでしょうね
まぁ、でもそこそこ仲良しですよ」

「そこはもう少し肯定しても良くない?」


それでも、司帝国よりはここの方が居心地が良いのは事実だ
こんな些細な会話だけで科学王国に漂う空気が分かる

そして私の返答は何からかにまで説明なく、私を巻き込むあさぎりさんへのちょっとした意地悪のつもりだった


「あー!スイカ分かっちゃったんだよー!」

「何がです?」


そう、この時までは


「なまえ、ゲンのハーレムのお手伝いしてる?」

「…ハーレム?」

「ちょっ!スイカちゃんそれは…!」


この世界で思いもよらない単語が今確かに聞こえた
あさぎりさんが僅かに慌ててる

どうやら聞き間違いではないようだ


「そうなんだよ!ゲンはハーレムを作りたいんだよ!
そのゲンと仲良しのなまえなら、そのハーレムを作るお手伝いしてるんでしょ?」

「なるほど、ハーレム…」


ちらり、とあさぎりさんを見ると彼は黙ってこちらを見ている

目を反らしていないからやましくないとでも言いたいのか
はたまた他の言い訳があるのだろうか


「スイカさん、私はあさぎりさんのハーレムのお手伝いはしてないですし
今後も、絶対、手伝いませんよ」


私の本心からの返答をすると

あさぎりさんはガックリとうなだれていた