16夜目

私は何時も銃兎さんより遅く起きる

銃兎さんは私より遅く寝る事も多いのだけど、何時も私より早く起きて完璧な身支度を済ませ、私の朝ごはんまで用意してくれている事が殆どだ

決して私が遅く起きている訳ではないのだけれど
早起きな銃兎さんには何時も関心していた

しかしまあ、たまには私の方が早く起きてしまう事だってあるわけだ

そう、今日のように

(…起きちゃったな…)

あまり動いて銃兎さんを起こすのも忍びないが、カーテンから漏れる光から察するにまだ明け方だろうか

たまたま眠りが浅かったか、はたまた銃兎さんの寝相か何かで起きてしまったか
理由はどうでも良いのだけれど、今この状況をどうしたものだろうか

たまには私の方が早起きして朝ご飯(と言っても本当に簡単なものしか銃兎さんも用意しないが)とコーヒーを用意したら驚くだろうか
何時もお世話になってるのだからこのくらい…

そう思った時だった

「…んん…」
(あ、起こしたかな?)

特に身動きをしていた訳ではないが銃兎さんがもぞもぞと動き出した
起こしてしまっただろうか、だとしたら悪いな、と思ったのも束の間
私を抱き直し、また聞き慣れた規則正しい寝息が聞こえてくる

(良かったー…でもこれ動け…)

無いな、そう思ったが
気付いてはいけない事に気付いてしまった

(…嘘でしょ…)

私を抱き抱える銃兎さんは、それはぴったりと私に体を密着させている
それは上半身は勿論、下半身に至っては私を抱え込むように足を絡めているのだ

(当たってる…!!!!)

何が、とは言わない

いや、そりゃ銃兎さんだって健全な成人男性であり、そしてまだまだ早いが一応現在は朝だ
そう、つまりこれは男として当然の生理現象なのだが

(いや、いやいやいや?!え、これどうすれば良いの?!
やっ、ちょ?!動かないで…!こ、擦り付けないで…!!!)

ただでさえ寝るときは本来全裸派の銃兎さんだ
私に合わせて下だけは着用してくれてるが所詮は薄い下着とパジャマ一枚で
私自身だって薄手のパジャマしか着ていない、隔たりはたった数枚の布しかないのだ
そんなの嫌でも感触が伝わる
え、いやわかんないけどこれデカくない?銃兎さん背高いし妥当なサイズなのか?
いやよく分かんないけど!!!

下手に動いて起こしてしまったとしても空気が気まずい
てかどうすれば良いかわからないにも程がある

しかし動揺も隠せず震えていると再び銃兎さんの声が漏れた

「ん…どうしました?朝には少し早いように思ますが…」

そうだよ、早いよ!でも貴方の体はバッチリ!!!起きてるんですよ!!!
なんていう事も出来ず

無言でやり過ごす事しか出来なかった

「…寝たフリです?…寝ぼけてましたか?…まあ良いですけど…」

先程より明かに覚醒していた為焦ったが、この最悪な事態に気付く事無く今度こそちゃんと寝入ったであろう銃兎さんの寝息に一瞬安堵した
だが、銃兎さんの下半身は変わらず私を捕らえたままだし
そして変わらず、あっちの銃兎さんは起きたままだ

(…こんな状況で寝れるか…!!!!!)

しかし抜け出す事も叶わず

結局数時間、地獄とも思える程遅い時の流れを感じながら
ソワソワしたまま朝を迎えるのであった




「どうしたんですか?眠れなかったんです?」
「…いや銃兎さんも長らく起きてましたよ…」
「はい?」