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(…白鐘くん?)


霧の深い夜、テレビに映っていたのは今話題の転校生だった


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「やぁ、なまえちゃん」

「足立さん、こんばんわ」


下校中、足立さんと偶然はち合わせた

ここは狭い町だが、それでも足立さんとはよく会う
生活圏が似ているのだろうか


「今帰りかい?」

「はい、晩御飯のお買い物してから帰ろうと思います」

「そっか、良かったら送って行くよ
ちょっと…今物騒だからね」


そう言った足立さんの表情は暗い
また、何かあったのだろうか


「…次は誰が行方不明なんですか?」


思わず
口に出た


「…やだなぁ、いくらなまえちゃんでもこれは…」

「白鐘くんですか?」


そう返せば
足立さんの表情が変わった


今年になってから、うちの学校の生徒が何人か行方不明になっている

それもまた、どれもこれも我が校の有名人

それが常日頃、生徒の話に耳を傾けている私の耳に入らない訳がない

そして、その行方不明者はもれなくマヨナカテレビに映っていた事もだ


「…ま、君は皆の生徒会長だもんね
そりゃ知ってるか」

「…ごめんなさい、試すような事を言って…」

「こっちも不安を煽るような言い方しちゃったからね」

「…事件は解決、したんですよね?」


この小さな町で起こっていた連続殺人事件

その犯人が捕まった

そう確かにニュースではやっていた

けれどまた
行方不明者が出ている


「大丈夫だよ、あの事件はもう解決したから
まだ裁判とか諸々残ってるけどさ」

「…ですよ、ね…」


なぜだろう

早紀を殺した人物が分かったからだろうか

そしてその人物を、私も知っていたからだろうか

認めたくなかったものが
足立さんの発言で私の中で確かなものとなったからか

気分が悪い


「犯人、なまえちゃんも知ってるんだよね」

「ほんの少しですけどね」


小さな学校だ
退学は決して多くはないし
彼の退学にはモロキンの名で嫌われるあの先生が関わっており、当時少し気の毒に思った程だ


「ごめんなさい足立さん…やっぱりお買い物はやめるので送って貰えませんか?
…少し、気分が…」

「うわっ、こっちこそ無神経でごめんね!
今すぐ送るから!」


結局その日はそのまま足立さんに送って貰い

途中急ぎ足でコンビニに寄った足立さんはスポーツ飲料やおかゆ、ゼリーなどを買ってくれた



皆は足立さんを頼りないと評価するが


私は誰より


この人に助けられている気がする