ラッコ鍋

飛蝗というのは災害に近いと思ったが、これも一種の災害だと思う。

「…これ、何の肉なんですか?」
「ああ、確かラッコと言われていたが…」
「はぁ?!」
「えっ。何?もしかしてこれ物凄く不味いとかなの?」
「…違います。…いえ、珍味として有名なんですよ」

突然のバッタの大群に襲われて逃げ込んだ番屋で腹が減ったからと料理された肉。
何の肉かは聞いていなかったがそれが煮えるにつれて香ってくる独特の香りに改めて何の肉か聞いた所帰ってきた答えに思わず声を荒げてしまった。

くそっ、知っていたら止めていたのに。
まさか今目の前で煮えているのがラッコだなんて予想もしなかった。

いや、そもそも話には聞いていたがまさか本当にラッコにここまでの催淫効果があるなんて思わなかったのだ。
先程からの体の火照りは勿論、今同室にいる男達の高揚感と言い間違い無い。
そして言い伝えではラッコを食すには男女同数が推奨されているが現状は男4人に対して女は私1人だ。
杉元さんは恐らく止めてくれるだろうがこの状況下では流石に分からない。
ここにいるのはあまりにも危険すぎる。

「…あの、すみません私先程から体調が悪くて…。
別室で休んでいて良いでしょうか?食欲もあまり無いので私の事は気にせず皆さんで頂いてください」

ここは本来漁師達の宿泊所だ、ならば別室には布団もある。
今の内から別室で布団に潜り込んでおけば流石にそれを暴いてまで私を犯そうとする男はここには居ないだろう。

ラッコの匂いでフラついて仕方がない。
紅潮しきった顔といい、明らかに体調に異常を来している事は明らかだったからかしつこく追求してくる人も居なかった。

良かった、別室ならば少しはラッコの匂いも薄い。
この体の火照りも布団の中でひっそりと処理すれば事なきをえるだろう。

意識が飛びそうになりながら何とか布団を敷き、潜り込む。
布団が体に擦れる感覚ですら敏感に反応してしまう。

さて、どうしたものか。