「いーよって、はぁ?!」
「うち部屋余ってるしー
あ、一応室ちんに連絡しとかなきゃ」
口にまいう棒をくわえたままポケットの中を探る彼を横目に私は事態が飲み込めずにいる
この子は何をちょっとコンビニ行ってくるみたいなノリで返事をしてるのか
「あ、室ちん?
なんかねー今家のないおねーさんみっけたからうちに住ませて良いー?
まいう棒くれたんだー」
わらしべ長者にしても色々飛躍しすぎだ
シラフでこんな初対面の男の子について行く程私は軽い女では…
「室ちんもいーって
ほら、寒いから早く行こー?」
「…君、何を言ってるか分かってる?」
「家ないって言ったのおねーさんだしー
もうまいう棒食べちゃったから返すのも無理だしー」
この子はものすごい純粋な子なのか
その身長といい嗜好といい謎は深まるばかりだ
「あ、そーだ」
何かを思い出したかのように漏らした声
そうだ、常識的に考えてこの行動はおかしいのだ
やっと気付いたか
「俺、紫原敦
おねーさんはー?」
前言撤回
やはりこの子はおかしい
「…みょうじなまえ」
しかし宿がないのも事実だ
ビジネスホテルやネカフェでも良いが何時まで宿無しが続くか分からない
資金は無限ではないし
藁を持つかむ思いでその申し出を受け入れた
「じゃー○○ちんね
よろしくー」
差し出された手を握り返せばもう戻れない気もしたが
その時の私はそれに気付けない程切羽詰まっていた