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「…何の真似だい?」

「大人なんだし分かるでしょ?」


ぎしりと軋むソファーの上で彼女を押し倒す形となった

この間一度キスをしてからより彼女のガードはかたくなり
外出の予定がなくとも化粧はし、隙を感じさせなかった


「氷室君、その行為で何を失うか分かってる?」

「分かってる
みょうじさんが今までずっとしてくれていた気遣いを全部裏切る事になるね」


別にこんな行為
何てことはなかった

今まで自ら欲した事など無かったのに
彼女に対しては違う


「その通り
ねぇ君、私が嫌いなの?」

「好きだよ
それも最近はlikeじゃなくloveの方だ
ついでに、気付いてると思うけど多分アツシも同じ」

「だから私は…!」

「それだよ」


その理由は
最近やっと分かってきた


「逆にさ、気を使わなかったらこうならなかったかもね
だめって言われると余計欲しくなる」


最初から、俺たちとは恋愛なんかしないつもりで
そうはさせないよう気を使う彼女はそれだけで魅力的だったのだ

俺たちに対し
好意・無関心・嫌悪
いずれかの感情を抱いた子しか関わった事が無かった中

好意的でありながら拒絶する彼女はあまりにも新鮮だった


「あとみょうじさんは少し勘違いをしてる」

「何を…」

「俺たちは、貴方が思っているよりもずっと子供だよ」


貴方のように
何時までも我慢出来る程大人ではないんだ