(一刻も早くこの状況を脱出しないと…)
大学生の部屋に転がり込んで数ヶ月
失業手当も無限ではない
そこそこ真面目に就活してるのにこうも決まらないとは
一刻も早く就職して、お金をためて、ここから出なくては
しかしお金がたまるのに何ヶ月かかるのだろう
本気で貯金すれば三ヶ月位で引っ越し費用は工面出来るだろうか
しかしそうなるとやはりもう暫くはこの生活な訳で
(…ダメだ)
考えを変えよう
今すぐ、ここから脱出する方法を考えるんだ
(住み込み…)
そう、寮付きの求人だ
これなら今すぐにでもこの現状を打破出来る
(いや、しかしなぁ…)
私が今見ている寮付きの求人
キャバクラ、風俗
つまり水商売だ
(これも人生経験と言い聞かせるか…
25って働けるんかな…
半年だけ働いてさくっとお金貯めて辞めるか…)
このままここにいても未来ある若者に悪影響なのだから
いっそこれもありなのかもしれない
「随分血迷ったね?」
「氷室君?!」
「俺が帰ってきたの気付かない位真剣だった?」
しまった、もうそんな時間だったか
やはりリビングで考え事はするものじゃない
いや、それよりも私がいち早くこの現状を打破すべきだと決心させたのはこの男にどう上手く言い訳するかを考えなければ
「水商売なんてやめなよ、みょうじさんにはあまり嘘をついて欲しくないな」
「…それでも、今よりましだよ」
「ふぅん」
何より
それが君たちの為だ
「じゃあさ」
それは流れるような
自然な動作だった
「俺で試してみてよ」
押し倒された私の視界には
端正な顔で冷たくほほえむ男がうつっていた