「なまえ?」
次に響いたのは氷室君の声だった
「大丈夫?なんだかうなされてたみたいだけど」
「えっと、氷室君?」
「うん?」
見慣れた顔に見慣れた部屋
寝る前と同じ感触のソファー
やはり夢だったのか
にしても嫌にリアルな夢だった
「…いや、何でもない」
「どうかした?なまえが甘えてくるなんて珍しいな」
確かめるように氷室君の首に手を回し
氷室君の体温を感じて確かにこれが現実なのだと再確認する
「…私が甘えちゃダメ?」
「まさか、むしろ嬉しいよ」
そう言って抱きしめてくれる氷室君に今は少しだけ甘えよう
「ところでなまえ」
「ん?」
「今日、アツシが帰ってくるまでまだかかるんだけど…」
どう?と耳元に響くのは熱を持った低い声
氷室君、顔だけじゃなくて声も良いんだよな
神様は不公平だ
「…程々に頼むよ」
そう私が返せば
氷室君は嬉しそうだった