03

(綺麗な学校だなぁ…)


鞄からは生徒手帳の他に賛美歌が記載された本も見つかったが
つまりカトリックな学校なのだろうか

決して悪い事をしてる訳ではない筈なのに校内を散策する事に負い目を感じた


(しかし陽泉…読みはようせんで良いんだよね…
どっかで聞いた気がする…)


そうぼんやりと考え事をしていたのだ

その結果

普段なら気付かない筈の無い存在に私は気付けず

廊下を歩いていながら壁のようなものに衝突した


「いだっ?!」

「…あんたなんなわけ?」


そう、上から降ってきた言葉に
私は声を失った


「ちゃんと前見て歩きなよ、ひねりつぶすよ?」


聞き慣れた声に
ぶつかった壁のようなもの
それは壁と形容するには相応しい程に高く

私は目を丸くした


そうだ思い出した
ようせんって、私が初めて氷室君に出会った時
彼が私に貸してくれたジャージに記載されていた文字だ

そして私の目の前にいるのは
その時氷室君が貸してくれたジャージと同じものを纏った

紫原君だ


「えっ?あ…え…?」

「なんなの?」


目の前の光景は私を更に混乱させるには十分すぎた

突然高校生になったかと思えば
私が知るより少し幼い紫原君が現れたのだ

そして状況が理解出来ずにいた私の口から思わず漏れた言葉に
状況は更に悪化した


「背、ちっちゃい…」

「はぁ?!」


しまった、今の声は明らかに逆鱗に触れた声だ


「えっ、あ、すいません!!
ぼんやりしてました!し、失礼します!!」


返事を返す間も与えず矢継ぎ早に私は体を反転させその場から駆けた

だって、私の知る紫原君はもう少しでかかったのだ

先ほどの距離だって慣れていた筈だった

だが高さが違う
その違いに私は思わず先ほどのような言葉を漏らしたのだが

どうせこれは夢なのだからきっと大丈夫だろう