06

この世界はとても私に都合よく出来ているらしい

あの二人のかつて送った学園生活に突如投げ入れられた私だが
実に都合よく出来たパラレルだった

当たり前のように用意された私の席に人間関係

やはり夢なのだろう
そうでなければこの都合の良さに説明がつかない


(にしてはやけにリアルだけど…)


放課後、再び校内を歩くと見慣れた紫色の髪が見えた


「あ、君…」

「あんたこの前の…」


紫原君だ
今日はまだ制服だ
そして今は放課後、ちなみに福井君はすでに部活に行っている


「この間はごめんね、びっくりしちゃって」


サボりを咎めてやろうかと思ったがまずは以前の非礼を詫びた


「別に、あんたみたいなチビの僻みなんか気になんねーし」

(思いっきり気にしてるじゃねーか…)


そう睨むような表情の紫原君にやはり違和感を覚える
私の知ってる紫原君はもっと柔らかな空気を纏っているからだ


「ねぇ君、部活は?
私と同じクラスの福井君はもう部活に行ったけど?」

「はぁー?あんたにかんけーねーし」


そう言うとまた睨みつけてきた
私今まで紫原君に睨まれた事なかったんだけどな


「いやぁ、サボりはあまり感心しないかなぁ…」


どうしたものかと思い
ばつの悪くなった私はポケットへと手を入れ

その存在に初めて気付いた


(これ…)

「ちょっと何それ、俺それ知らないんだけど」


そこに入っていたのは私にとっては思い出深いお菓子でもある

まいう棒、ジンギスカン味だった


「…部活行くならこれあげるよ」

「はぁー?」


こちらの紫原君とはまだ計五分も会話をしてないが
この短時間で私は三回睨まれる事となったのであった