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僕達はいつも一緒だった。
生まれた日や見た目に始まって、好きなもの、やりたいこと、考えていること。何から何まで一緒で当たり前だった。
だから、歳を取るにつれて少しずつ違っていくことが怖かった。身体も、声も、君から離れていく僕の身体が怖かった。僕ばかり勉強を多くさせられて、会社の用事に連れ回されて、君と違うことを覚えていく僕の頭が怖かった。君が僕から離れて女の子になっていくのが怖かった。性別が違うから普通のことだと言われても、それでも僕は君から離れたくなかった。せめて気持ちだけは一緒のままでいたいと思った。できるだけ近くにいて、できるだけ一緒にいて、同じものを見て、同じものを食べて過ごした。

「友達にね、リオがいるから私は彼氏が欲しいって思わないんじゃないか、って言われちゃった」
「僕も彼女はいらないな」
「私がいるから?」
「そう。同じだろ?」
「同じだね」

そう。これで良い。必要になった時は、いっそ僕が君の彼氏になればいいと思った。そうすれば僕達はずっと一緒でいられると思った。
思っていたのに。

「……婚約者?僕に?」

親が連れてきたのは、提携会社の娘という子だった。会社の都合で婚約だなんて、時代錯誤だし相手もきっと嫌に決まっていると思った。相手は賛成とも反対とも言わず、まずはお友達から、それからどうするか考えよう、と提案してきた。
「それでね、リオってば『私がいるから彼女はいらない』って言ってて心配だったんだよ。だけど■■■さんみたいな人がいて良かった」
相手が君とすぐに打ち解けていたことには嫉妬したけれど、悪い人ではないことがわかった。寧ろ、僕には勿体無いほどとても気が利く人だった。僕は結婚したくないという本音は、日を追うごとに言い出しにくくなった。

「あ、リオ、今日は先に行くから、■■■さんと一緒に行きなよ。じゃあねー」

そして、日を追うごとに君との時間が減った。今日こそ、明日こそ、次こそ、そう思って話しかけても、あの人と一緒にいなさいと言って離れていった。婚約者も悪い人ではないから無下にすることはできない。そして顔を合わせない日まで出てきた。君が何をしているのか、何を考えているのか、無事でいるのか、ずっと考えていた。君がいない時間が増える度に、僕が一体何なのか、わからなくなっていく。
だから、助けてほしかった。

「……あれ、リオ?」

真夜中、君のいるベッドへ入った。

「暫く話してないから、寂しかったんだ」
「そうなの?私もちょっと寂しかったんだ」

その同じ気持ちに、どれだけ救われたことか。
僕達は昼間会えない分、夜を一緒に過ごした。何をしたか、何を考えたか、たくさん話した。そこに同じ気持ちがあると、とても嬉しかった。僕達はまだ一緒でいられたんだと、再確認できた。

「それで、■■■さんとはどうなの?」

ただその一言だけが、嫌だった。
今は、僕達の話がしたいのに。
婚約者のことを君が心配するのはわかっていた。だから本当のことは言えない。頑張って思い出して、上手くいかなかったことを叱られる構図を繰り返していた。
そして僕は考えた。どうすれば婚約者と上手くいっていると思わせて、君との時間を有意義に過ごせるかを。

「お願いだ」
「でも…」
「君しか頼れないんだ」
「……わかった」

時間というものはとても残酷だった。離れている間に、僕達の身体は完全に別物になっていた。僕の筋肉質になってきた身体とは全然違う、君の身体は細くて柔らかくて、女性そのものとして成長していた。
それでも、触ると悩ましそうに声を上げて呼吸を荒くする様子を見て、僕も息が上がった。凄くドキドキしていることを告げたら、君もドキドキしていると言った。この行為には、同じになることがたくさんあった。

「…本当に、するの?」
「……ああ」

そして昔から嫌だった、下腹部の違いの理由を漸く理解した。これは、こうやって僕達が一つになるために、必要なことだったのだと。
そう考えると、この世界の解釈が間違っていたことに気がついた。一つになるには、性別が違っていなければならない。僕達の性別が違うのは、全てこのためにあったのだと。

「…っい、たぁ…!」

君が痛みを訴えている。僕も君のナカがきつくて、痛くて苦しい。同じ気持ちだった。

「っあ、あ、リオ、きも、ち…」

動かすと気持ちが良かった。君もそう言っていた。同じ気持ちだった。

「……なか、あ、つい…」

頭が真っ白になって、君のナカで熱いものが弾けた。君も熱を感じていた。それが嬉しくて何度も何度も突いた。何度もナカに熱を吐き出した。その度に君も何度も何度も声を上げた。全部同じ気持ちだった。

「僕、嬉しいんだ。こんなに同じ気持ちになれること、初めて知ったんだ」
「だから、これからもこうやって君と一つになりたい」

当然、君も同じ気持ちだと思っていた。

「それは、駄目だよ」

その返答は、理解できなかった。

「どうして、だって君もドキドキするって、気持ちいいって」

「■■■さんのためじゃなかったの?」

最初はそうだった。そういう建前だったけれど、もう違う。もう君と一つになれることを知ってしまった。この世界の答えを知ってしまった。

「私は、リオがしたことないから、練習したいって言うから、手伝っただけだよ」
「でも、僕は君が」
「私は、そんなつもりで、したわけじゃ…」

君が思ってもいないことを言う理由を考える。婚約者に悪いと思っている、この婚約を破談にできないから苦しんでいる、僕達が兄妹だから倫理上拒んでいる、そうに違いない。

「婚約は辞退する」
「そんなの、駄目だよ」
「父さんたちも僕が説得する、原因は僕なんだ、向こうの家にも不都合のないようにするし、何も心配はない」

それさえなければ、僕達は同じ気持ちなのだから、何も怖いことはないはずだ。ないはずなんだ。

「…ほら、気持ちいいのは僕達が同じ気持ちだからだ」
「…っや、めて」
「嘘をつかなくていいんだ」
「…もう、やめて…!」

心配はないと伝えたはずなのに、先程と同じように触れても拒絶の言葉を返してくる。両手で僕の胸を押し返そうとしてくる。君は僕と同じ気持ちのはずなのに。拒絶されるたびに息苦しくなる。頭が痛くなる。目眩がしてくる。

「……黙れ」

目の前にあった君の手を掴んだ。その手が、視界が、ぐにゃりと歪む。そして僕の手から光が溢れ出し、昇っていく。これは、火だ。僕の手から、火が出ている。

「あ、ついよ、熱い、熱い…」
「…あ、はは、丁度いい」
「……え」
「これで、これで僕に問題があると証明できる。僕がバーニッシュだから、婚約も、家督も、全部」

僕に押し付けられているもの、君になかったものが全部、帳消しになる。君と同じになれる。もっと同一に近くなる。

「熱い、あつ、い、離して」
「え?」
「熱、くて、痛い…」

それは至極当たり前のことだった。
僕と君が二人でバーニッシュになったわけではない。バーニッシュになったのは、“僕”だけなのだから、僕の起こした火が君の皮膚を焼いて当然だった。
僕はすぐに掴んでいた手を離した。僕が掴んでいた場所は、表面が焼けて赤く爛れていた。

「……い、やだ」

驚いて君から離れた。
僕はもう君に二度と触れられないのだと理解した。

「…や、いやだ、いやだ!やっと、やっと一つになれたのに」

僕はただ君と一緒でいたかっただけだ。一つになりたかっただけだ。
どうして僕達がこんな酷い仕打ちを受けなければならないんだ。

「君に、君に触れられないなんて、こんな、こんなひどいこと…!」

僕は漸く気がついた。
最初から僕達は同一なんかじゃなくて、同じ親のもとに生まれたのも、見た目が似てしまっているのも、同じ気持ちになったのもただの偶然で、僕と君は別の存在だったのではないか。
これは、僕と君を同じだと勘違いをしていた、思い込んでいた、現実から目を背けていた僕への、罰なのではないか。

「…リオ…?」
「……ご、めん、僕、は…」

どうして一緒が良かったのか。同一でありたいと思っていたのか。
その理由は簡単だった。僕は、ただ君が好きだっただけなんだ。
 
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