― それを全部説明してよ
― いいや、冒険が先だ
― 焦ったように言いました
― 説明っていうのはとんでもなく時間がかかるんだ
「ほのおポケモンジムでのジムミッションはー!」
予定通り朝一番、オープンと同時にジムの受付へ。
受付も無事に済ませたあたしは、早速ミッションを開始していた。
(咄嗟の判断、ってやつが見られるのね)
ポイントをスムーズに集めるには、出てきたポケモンを倒すか捕まえるか、的確に判断しないといけないようだ。
うん、こういうの覚えてればよかったわね。そしたらもっと色々準備したのに。
モンボとかモンボとかモンボとか。
「ジムミッション、スタート!」
とはいえ、もう始まったのだからしょうがない。
あるだけの知識とストック、そして相棒と乗り切ろう。
「ヌメた、ゴー!」
「全てのポケモンを倒すとは、意外だったよ」
「ルールを勘違いしてたみたいで。お恥ずかしい」
はい、みんな倒しました。
一緒にいたトレーナーさんも、あっ捕まえないの?みたいな空気になってたけど。
「ようこそ!ぼくがほのおタイプのジムリーダー、カブだ。」
熱気がすごい。最初の関門、と呼ばれるだけある。
カブさんに勝てず断念するチャレンジャーも少なくないんだもんね。
でも。あたしだってある意味人生かかってるから。
「勝負の分かれ目は、本番でどれだけ実力をだせるかだ!」
絶対に負けられないのはお互い様。
なら確かめてみましょう、どちらの意志がより強いのかってことを。
「アツイアツイ、よく自分で治したねー?」
「ヌンヘエ〜〜〜」
汗だくになる試合を終えたあたしは、ポケセン近くでヌメたに水をあげる。
ヤケドで苦戦するかも…と身構えていたら、なんとヌメたくんは気合で自己治癒していた。
そういうの自力で治せるものなの?そうなの??ポケモンってすごくない???
いやうちのヌメたがすごいんだけどさ。
「カラッカラにならないか心配しちゃった」
「メンラーラ!」
ドヤ!とそれはもう胸を(ボディを)張る彼に、改めてご褒美のシャラサブレ。
お金が貯まったらもっといいスイーツを買ってあげるからね…
「もう少し休んでから行こっか」
最初はロビーで一息つくつもりだったのだが、視線が凄くてさっさと撤退した。
なんだかんだテレビ効果ってあるのね。めっちゃ見られてたし。疲れるゥー
「あ、あの!」
「はい?」
伸びをしてまったりしていると、不意に声をかけられる。
振り向くとそこには可愛らしい制服女子2人が。スクールガールちゃんかな?
「ナナシ選手ですよね!?」
「そうです」
「サインください!」
「サイン!?」
「私たち、ナナシちゃんのファンなんです!」
「ファン!?」
えっなにこの展開。芸能人でもないのにファンとかある?
でもキラキラした目を見る限り、イタズラとかではなさそうだ。
「ヌメラだけでジム突破するなんてかっこよくて!」
「ナナシちゃんもかわいくて大人っぽくって!」
「チャンピオンの推薦にピッタリの実力だし!」
「やっぱりダンデさんに鍛えてもらったんですか!?」
「ダンデさんのこと好きですか!?好きですよね!?」
「キバナさんはどうですか!?同じドラゴン使いとして!」
「ヌメたくんとのツーショット撮ってもいいですか!?」
「はいどうぞ」
マシンガントークが始まって、もう最後の発言しか拾えなかった。
女の子のパワーやばい。カブさんとはまた違う勢いよ…
「サインじゃないけど、これでいい?」
「わー!ありがとうございます!」
「これってヌメたくん……?ですよね!ありがとうございます!」
突然サイン求められても作り出せないので、渡された手帳に書いたのはヌメた。
微妙な出来でごめん。でも一応わかるからいいよね。
「応援してます!」
「頑張ってください!」
「ありがとー」
「ヌンメラー」
差し入れのおかしをもらって、いざエンジンシティのゲートへ。
電車で来たから、この階段を使うのは初めてだ。ちょっとドキドキ。
「ナナシ!」
「あらカブさん。さっきぶりです」
今度はカブさんの登場だ。
何用かと不思議だったが、どうやらエンジンジムを突破したチャレンジャーはジムリーダーが送り出す習わしらしい。
「本来ならヤローくんとルリナくんも来るんだが…二人とも挑戦を受けていてね。僕だけで失礼するよ」
「ありがとうございます、カブさんに見送っていただけるなんて光栄です」
僕も嬉しいよ、なんて笑うカブさん素敵。おじさまの魅力。
ダンディーな男の人もセクシーでいいよねえ…
「ところでナナシ、キミに聞きたいことがあるんだ」
「何でしょう」
「なぜ誰もゲットしなかったんだい?」
「?と仰いますと…」
「キミはミッションのルールをきちんと理解していたね。けれど捕まえなかった」
「……」
「それはなぜだい?」
―――鋭い人だ。流石、というべきか。
ただ理由を教えるつもりは一切ないけどね。
「ルールを勘違いしていた、それだけですよ」
→