― そこに良いも悪いもございません
― 全ては考え方次第にございます
「着いたぞ。ここがナックルシティだ!」
「わー」
「メー」
結局、翌日からホップと一緒にワイルドエリアを通って到着。
大きな門に圧倒されながら踏み入れた先は賑やかな街並みだった。
「目の前にあるのがナックルジム。でも俺たちはまだ挑戦できないんだぞ」
「バッジ7つ集めなきゃいけないんだっけ」
そこまで到達する人は少ないんだろうなー
ま、あたしには関係のない話だけど。
「なんか上の方すごくない?」
「これは「ナナシくん!ホップ!」
ジムっぽくないてっぺんを見上げながら話していたら、元気な声が。
途端にホップの表情が暗くなる。うん、これはあの人だね。
「ダンデさん」
「よかった、キミたちも着いたところだったんだな」
ニコニコと嬉しそうなダンデさんに反して、ホップは俯いたままだ。
うーん、タイミング悪いなー…ホップはまだ悩んでるところだし。
「…アニキ、ゴメン!」
「ホップ?」
耐えられなくなったのだろう、彼は走り去ってしまった。
事情がわからずダンデさんもきょとんとしている。
え、ちょっと待って。これあたしがフォローしなきゃいけないやつじゃん。
「いったいどうしたんだ?」
「あー…なんか、色々と考え込んでるみたいで」
「もしかして……アイツ、負けて落ちこんでいるのか?」
「そうみたいです」
「とにかくアイツのライバルとして、ホップをよろしく頼むぜ!」
実はビートに負けて…という詳細を聞いていたけど伏せておいた。
他人のあたしがどこまで伝えていいのかわからないしね。
「おっと、時間だ!委員長との打ち合わせに遅れると、秘書に怒られるんだ……場所もわからないのにな」
「ええ……」
「エエ……」
最初にそれを確認すべきでは?
ボウルのヌメたも呆れた顔でダンデさんを見ている。
「でも会えてよかったぜ!じゃあまた!」
「ええ……」
行っちゃったよ。どこ行くかわからないのに?
止める間もなくあっという間に遠ざかるマント。やっぱりあれ素敵〜
「ナナシくん!おや、奇遇だね!」
「(ええー……)ローズ委員長、ご無沙汰してます」
惜しい。惜しすぎる。
なんとダンデさんを見送った直後に、スタジアムから委員長が出てきた。
あと数分…いや数秒ここで立ち止まっていれば……あーあ。
「きみのニュースが聞こえず気になっていたよ。ナックルシティに到着した感想はどうかな?」
「門にもジムにも圧倒されます。お城の佇まいなのに、どこか近代的というか」
「そう!ナックルシティのスタジアムは、エネルギープラントとしての役割も持っているんだよね」
「なるほど」
「詳しいことが知りたければスタジアムに行くといいよ!いやもういますぐ来るべきだよ!」
「はい。……はい?」
「ガラルのエネルギーについて教えるから、ついてきなさい!」
目を輝かせたローズさんにテンションMAXで連れて行かれた。
わりと強引だな、この人!でも少年っぽさがあるというか、嫌な気はしない。
「わたくしのタブレットで説明をみてみようか!ほら!わかりやすいエネルギープラントの解説だよ」
きっとこういうところが、みんなに好かれる理由なんだろうな。
「ナナシくん、次は宝物庫へ行きたまえ!宝物庫ならここスタジアムから6番道路に向かえばみつかるよ」
「わかりました、ありがとうございます」
熱弁から解放されて、言われた通りあたしは宝物庫へ向かった。
普通に見てみたいしね!でも一般人って入れるのかしら。ゲーム的には全然ありだろうけど。
「おっ!チャンピオンが推薦したナナシだな!」
「はじめまして、キバナさん」
うわー!入口にいた超絶イケメンに声かけられたよ!
生キバナだよ!脚なっが!イケメン!すき!
「やっとオレさまに会いに来たのか?待ちくたびれたぜ」
「いえ、用があるのは宝物庫です」
と内心でめっちゃはしゃぎながらも、表向きは冷静に。
ジムチャとかお子ちゃまとかじゃなきゃ、一回くらいはデートしたいわね。
「おっと!宝物庫か!歴史からポケモンを学ぶのも悪くないやり方だよな」
「(別に勉強とかじゃなくてただの興味本位なんだけど)」
「気に入った!オレさまについてきな!」
こちらの返事を前向きに受け取ったキバナさんが上機嫌で対応。
残念ながらヌメたはいったんハウス。また後でね〜
「宝物庫なら階段の先だぜ!」
「わかりました」
いかにも守ってまーすな扉を抜けていざ上階へ。
ただそこはガランとしていて、自分の想像していた宝物庫とはずいぶんかけ離れていた。
(なんかこう…黄金キラキラ!みたいなイメージだったのに、ずいぶん寂しい場所だなー)
数枚のタペストリーと、おまけ程度に置かれた本棚。
タペストリーは一瞬で見終わった。だって普通の絵で、ストーリー仕立てになってるのかもよくわからん。
ということで、あたしは本棚に近寄った。
こっちは文字もわかんないし、タペストリー以上に―――
「あっ!?!?」
ぼーっと眺めていたあたしは、ある一点を見た瞬間、冷水を浴びた様にスッと身体が冷えていった。
直後、ばくんばくんと心臓が大きな音を立て始め、急激に熱を帯びる。
これは。どうして。誰もが知る愛の物語。“ここでは”誰も知らないはずの物語。ピカピカの背表紙。思い返せば重なるところはあった。例えばティータイムの習慣とか。
「ロミオとジュリエット…」
―――ここは、イギリスだったんだ。
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