「着いたぞ。ここがナックルシティだ!」
「わー」
「メー」
「目の前にあるのがナックルジム。でも俺たちはまだ挑戦できないんだぞ」
「バッジ7つ集めなきゃいけないんだっけ」
共にワイルドエリアを抜けて辿り着いた、荘厳なる佇まい。
相棒と一緒に歓声を上げる少女にホップは説明を続けようとした。
「なんか上の方すごくない?」
「これは「ナナシくん!ホップ!」
間違えるはずのない、兄の声が耳に届くまでは。
「ダンデさん」
「よかった、キミたちも着いたところだったんだな」
いつもなら飛び上がる程喜んでいただろう。
しかし今の彼には少々酷な偶然だった。
『 泥を塗っていますね 』
「…アニキ、ゴメン!」
ナナシに諭されてから、ホップなりにも色々思うことはある。
同時にそれはまだ進行中で、何の整理もできておらず。
何も知らない兄に居た堪れず、結果その場を走り去ってしまった。
「ホップ?」
どうか今だけは、無様な姿に目を瞑ってほしいと。
「いったいどうしたんだ?」
「あー…なんか、色々と考え込んでるみたいで」
突然の謝罪、そして遠ざかる背中にダンデは困惑した。
隣にいたナナシへ問うが、彼女も言葉を濁すだけ。
「もしかして……アイツ、負けて落ちこんでいるのか?」
だが。彼は信じている。
例え何があったとしても、ホップなら乗り越えられると。
「そうみたいです」
だからこうして深入りせず傍観に徹するのだ。
ジムチャレンジは心身共に成長できる最高の機会。
自慢の弟なら必ず晴れ舞台で相まみえる、そう信じている。
「とにかくアイツのライバルとして、ホップをよろしく頼むぜ!」
兄として。トレーナーとして。
「ナナシくん!おや、奇遇だね!」
「ローズ委員長、ご無沙汰してます」
到着を確認後、頃合いを見計らって例の少女に声をかけた。
何とも言い難い表情でチャンピオンの走り去った方向へ視線を向けている。
彼には追って一報を入れておこう。
「きみのニュースが聞こえず気になっていたよ。ナックルシティに到着した感想はどうかな?」
「門にもジムにも圧倒されます。お城の佇まいなのに、どこか近代的というか」
「そう!ナックルシティのスタジアムは、エネルギープラントとしての役割も持っているんだよね」
「なるほど」
今のところ特別な反応は見られない。
“彼”が眠るこの地にて、何かあるかと予想していたが。
「詳しいことが知りたければスタジアムに行くといいよ!いやもういますぐ来るべきだよ!」
「はい。……はい?」
「ガラルのエネルギーについて教えるから、ついてきなさい!」
しかしそれを差し引いても、ガラル地方について教えるチャンスだ。
戸惑いながらも大人しく後をついてくる彼女に笑いかける。
十二分に理解してもらおう。
「わたくしのタブレットで説明をみてみようか!ほら!わかりやすいエネルギープラントの解説だよ」
全ては愛する我が故郷のためである。
「おっ!チャンピオンが推薦したナナシだな!」
「はじめまして、キバナさん」
その日、宝物庫の整理に立ち会っていたキバナは歓喜した。
注目していたヌメラ使いに中を見せやってくれという委員長の知らせに。
「やっとオレさまに会いに来たのか?待ちくたびれたぜ」
「いえ、用があるのは宝物庫です」
誰かさんの興味を惹いているらしい少女は、ちょっとばかしの甘い言葉では靡かないようだ。
ちなみに腕に抱いているヌメラの方が軟派なセリフに難色を示している。
「気に入った!オレさまについてきな!」
相棒をボールに戻したナナシを案内すると、辺りを軽く見渡しただけで、然程興味はないように見えた。
ここはそもそもロビーのため、面白くないのは当たり前だが。
「宝物庫なら階段の先だぜ!」
「わかりました」
一応行くだけ行くか、という雰囲気駄々洩れの背中を見送りキバナは苦笑する。
タイプは違えどマイペースなところが自分のライバルに似ていた。
「キバナさま、今のってナナシ選手ですよね?」
「そ。でもオレさまに興味ないんだってよ。最強のジムリーダーでドラゴン使いなのになあ?」
彼としてもヌメラだけでバッジを3つ獲得した挑戦者は気になる存在だ。
降りてきたら捕まえて話をしようと画策しつつ、一時業務に戻るのであった。
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