「さて」
「はい」
宝物庫で大目玉を食らうことをした後、へとへとになったあたしをキバナさんはコッソリ自宅へ連れ帰ってくれた。
お風呂もパジャマも貸してもらい、お互い一息ついてからテーブルで向かい合う。
「とりあえず、我々の間には何もなかったということで」
「ちょっと待って」
ご飯も用意してくれたので、温かいスープに手を付けながらそう言ったのだが、イケメンおにいさんからストップが。
んもう、なんだよ。
「…オレさま聞き間違えたかも。もう一回言ってくれる?」
「とりあえず、我々の間には何もなかったということで」
「いやおかしくね!?」
なぜか騒ぎ出したぞ。スルーして再びスープに口をつける。
ふは〜〜あったまる〜〜〜
「普通さあ、他にもっとあるじゃん!」
「例えば」
「『責任取ってくださいね☆』とか!」
「あ、そういうのいいです」
「なんで!?」
「面倒なので」
「面倒!?」
テンション高いな。それにしても普通はその辺触れないもんだけど…
わざわざ自分から言うってことは責任感があるのね、イケメン〜
「つーか我々とか言うなよ…すんげえ壁感じるんだけど…!?」
「まあまあ、細かいことは気になさらずに。いいじゃないですか、お互い気持ちよかったってことで」
「それその年で言っていいことじゃないから!」
「あんまり大きな声出すと近所迷惑ですよ」
ちなみにキバナさんの家はペントハウスなので、隣人に該当するような部屋はない。セレブ〜〜
というかジムリの収入ってどんだけあるんだよ…いや多分出演料とか給与以外もあるんだな。
「…マジでさ。オレに要求すること、ないの?」
「ないですね」
「即答か…」
諦めたのかキバナさんも席に着いて食べ始める。
そうそう、体力使ったし栄養補給しましょ。
「もしかして彼氏いる?」
「彼氏いたら他の人とえっちなことなんてしません」
「なにそれかわい…じゃなくて。ガチでフリーならオレさま責任取るけど」
「キバナさん」
気持ちはありがたいけど、ねえ。
そういう責任感もイケメンなんだけど。ねえ…
「よく考えてみてください。あたしは未成年ですよ?犯罪です、犯罪」
「結婚前提なら未成年との交際もOKだけど」
「え、おも…じゃなくて。そういう問題じゃありません」
「待って今重いって言った?未成年なのに結婚重いって言った??」
「それに!あたしはチャンレジャー。キバナさんはジムリーダー。ジムチャ中に付き合った、なんて知れたらどうします?」
「それは、まあ…」
やば、うっかり重いとか言っちゃったよ。
テキトーに誤魔化せばキバナさんも徐々に納得へ向かう。
と油断していたら、この人はとんでもないことを言い出した。
「ダンデは?」
「ダンデさんが何ですか?」
「フリーってことはあいつとも付き合ってないんだよな」
「当然です」
「ふーん……」
うわーぜんっぜん納得してないよ。
てかなぜダンデさんが出てくる?
「キバナさん、あたしがダンデさんともえっちなことしたって思ってるんでしょ」
「うん。だってあいつ、オマエのことは特別気にかけてるし」
「はあ〜〜〜…。ダンデさんには弟がいるんですよ?そんな人が弟と同じくらいの女の子に手を出しますか?」
「それもそうか」
まあシたんですけど。
「気にかけてるのも、諸事情であたしの保護者になってるからです。ただそれだけですよ」
「ただそれだけ、ねえ…」
うーん。まだ何か言いたそうだな。
この話題、あんまり深く聞かれると困るのよねー
さっさと切り替えよう。お願いしたいことあるし。
「ところで話は変わるんですけど、キバナさんにお願いがあります」
「お。やっぱりオレと付き合う気になった?」
「そっちじゃないです。普段から宝物庫へ出入りしたいんです。取り計らってくれませんか」
謎なことが多いけど、あの書物に何かしらの手掛かりがあるはず。
ただし宝物庫はナックルジムの管轄下。一般人のあたしがそう簡単に入れる所じゃない。
ということでどストレートにお願いしました。今はこれ以外の対応策ないもの…
「もし断ったら、今日のこと訴えたりすんの?」
「言ったでしょう、『我々の間には何もなかった』、と。だから断られるなら、別の方法を見つけます」
「へえ。お誘い上手の割にズルはしないのな。最高じゃん」
「それで、ご返答は?」
うんって言って欲しいというか言ってくださいお願いします。
頼む〜頼む〜と送ったオーラが効いたのか、キバナさんはニッコリと笑った。
お?これは…!
「いいぜ。ただし条件がある」
「お付き合いはしませんよ」
「そっちじゃない。簡単だぜ、ナックルのジムチャレンジを受けろ」
「ええー……」
ちょっと待って。あたし聞き間違えたかも。
まさかの条件に思わずテンションがダウンしてしまった。
キバナさんはというと、そんなあたしの様子を意に介さず、やっぱりニッコニコだ。
なぜだし。
「オレずーっと待ってたんだぜ、オマエがナックルに来るの」
「そうだったんですか」
「だってヌメラだけでカブさんも突破するなんて、同じドラゴン使いとして外せないだろ」
「はあ」
「なのに全然来ないし。やっと来たと思ったら、キバナよりも本に夢中だし?ちょっと面白くねえな、と」
「ええー……」
「オレはオマエと戦いたい。それも野良なんかじゃない、オフィシャルなフィールドで」
だんだんと釣り目になるキバナさん。八重歯も見せてTHE捕食者という感じだ。
やっぱりこの人、ジムリーダーっていうかチャンピオンのライバルっていうか。意外と好戦的よね。
「だからバッジを7つ集めてオレさまのところへ来い。挑め。その後で手配してやるよ」
「…念の為確認ですが、条件は“挑む”ことですね?“勝利”ではありませんね?」
そんなところも好き!イケメン!なんてキャッキャしてる場合じゃない。
あたしだって真剣なのだ、条件に関しては一歩も譲るもんか。
「ああ。ただ適当なバトルなんかしてみろよ、オレよりもギャラリーがキレるぜ」
「そんなことしませんよ」
よし、言質は取った。キバナさんの性格上、口約束でも破ったりはしないはず。
正直ジムチャ中断する気満々だったが、こうなったら。
「やるからには全力で挑みます」
表舞台に立つのはあたしの大事なパートナーたち。
彼らの闘いに恥じぬよう、あたしも全身全霊でバトルに身を投じてやる。
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