― 愛とは眼で見るものでなく
― 己が心で見るものですわ
― 故に翼有する愛の天使は
― 瞳など描かれていないのです
「ナナシちゃん!心配したよ〜!」
ユウリの家に行った瞬間、思いっきりハグされた。
意外と力強いな、この子…!
微妙に苦しいけど、迷惑料としてお支払いしておこう。
「ごめんごめん。でももうへーきへーき」
「もうっ。顔色悪くて、すっごく不安だったんだからっ」
プクーと頬を膨らませるユウリ。かわいすぎない?
こりゃ男なんていちころですわ。イイ女になるんだよ…
「そういえば図鑑もらったんだって?」
「うん!昨日ソニアさんとマグノリア博士に!」
「いいなー」
どうやらユウリもホップも、着々とジムチャレンジへの下準備を進めているらしい。
あたし?まだまだ先になりそ。だって図鑑どころか服さえ満足に揃ってないもんね。
「ナナシもソニアに頼むんだぞ!」
「いやあたしスマホ持ってないし」
「あっ、私が前持ってたのでよければあげるよ?」
「いいの!?」
「よかったな、ナナシ!」
マジすか!?ユウリちゃん優しすぎる〜!なんなの?天使?
彼女曰く、先日おニューのロトムスマホにしたばかりなんだとか。
以前のものは一般的なタイプで、通話は契約しなきゃできないけど、その他機能は問題ないそうだ。
「部屋にあるから見せてあげる!」
「やったー!あ、ホップはここで待っててね」
「え?俺も一緒に行っちゃダメなのか?」
「ユウリのお部屋は女の子専用でーす」
あたしが勝手に決めるなって感じだけどね。
でもユウリも乗っかって専用でーすなんて言ってるからいいでしょう。
ちなみにホップはちょっと顔赤くして気まずそう。
そういうところだぞ、からかいたくなるのは。
「ほんとにもらっていいの?」
「いいのいいの!あっても使わないんだし」
シンプルながら使い勝手のよさそうなお古スマホを受け取る。
あたしがいた世界の物と大した違いはなさそうだ。これなら操作で困ることないかも。
「それに、ナナシちゃんが私の物持ってくれると嬉しい」
「?」
「だって、ずっと一緒にいられるみたいでしょ?」
「ユウリ…!」
おいおいおい。かわいいじゃないか。お持ち帰りしていい?
こんなん言われた日には男なんかいちころですわ。
ユウリ…恐ろしい子…!
「だから肌身離さず持っててね?」
「もちろん!絶対大事にするよ〜」
「ふふ。私もナナシちゃんのこと、大事にするよ」
あたしの両手を包んでエンジェルスマイル。うーん、たまらん。
もう式挙げちゃお?おれもユウリのこと大切にするからさ…
「ふふ。その時は優しくするから、ね?」
「?」
「ここが博士の家かあ」
「いや研究所だぞ」
そっちかよ。それにしても本がいっぱいだなー
あたし結構本読むの好きなんだよね。
でも文字覚えたてだから、ここにあるような書籍はまだ難しいかな。
「ホップとユウリじゃん」
「ソニアさん、こんにちは」
「やっほ。なになに、両手に花ってやつ?ホップもやるね〜」
「そ、そんなんじゃないぞ!」
うわめっちゃかわいい人降りてきた!しかもワンパチ従えてる。
かわいさ倍マックスじゃないですか。好き。
「もしかしてその子がナナシちゃん?」
「そうです!」
「そうだぞ!」
「(なぜに二人が返事を?)はじめまして、ナナシです」
「はじめまして、私はソニア。よろしく!」
うわあーめっちゃかわいい人だ!それもオシャレさん!
聞いたところ、ダンデさんとは幼馴染で、ジムチャレンジも共に参加してたとか。
いいなあ。ダンデさん、そのポジション替わってください。
「ナナシもジムチャレンジに参加するの?」
「はい。それで図鑑頂けたらと思って」
「もちろん!おばあさまも喜ぶよ。それじゃあちょっと待っててね」
あたしのスマホに図鑑機能を設定してもらう間、ワンパチをもふもふ。
ヌメたはもふもふできないからね〜このくらいの浮気は許してね〜
(…それにしても)
こうしてワンパチと触れ合っていると、なおさら思う。
コイツどう見てもコーギーじゃん?もちケツ具合とか胴長短足具合とか。
でもコーギーってか犬は存在しない。今日の夢に“ちょうちょさん”は出てこなかったけど。
(…あたしはいったい、どこにいるんだろう)
「ナナシ!!」
「な、なに!?」
「あ…ごめん」
なんだなんだ。急に大きな声出すからワンパチもビックリしてるじゃないか。
ホップも自分で驚いたように目をパチクリさせてる。
あれ?これ確か昨日もあったな。
「どうしたの?」
「ホップ?ナナシちゃん?」
ソニアさんとユウリも何事かと様子を見に来た。
ホップは何でもないって言ってるけど、何でもない風じゃないぞ。
待てよ…その態度…まさか…
「ホップ、もしかして…あたし透けてた?」
「!!!」
「下着の色」
「なっ…そんなわけないだろ!」
違うのかよ。
「なあ、今日一緒に寝てもいいか?」
「え?うん、いいよ」
あら珍しい。夜部屋を訪ねてきたホップは、昼間からずっと浮かない顔だった。
やっぱりブラ見えてたのか?見てしまった罪悪感か?ピュアッピュアだもんなー
「はい、どーぞ」
「ん」
ずれて寝床を一人分開けると、大人しく潜り込んでくる。
考えてみると、下着には過剰反応するのに一緒寝るって謎じゃない?別にいいけど。
「……」
「あのさ、ホップ。大丈夫だよ」
口数少ないホップは、いつもと違ってどこか不安気に瞳が揺れている。
落ち着かせる為にぎゅーっとして、背中をポンポン叩いてあげると抱き締め返された。
「…本当に?」
下着透けてたくらいでショック受けるほど純粋じゃないって、あたしは。
もちろん痴女ではないぞ。断じて。
「うん。へーきへーき」
「…そっか」
やっと安心したらしく、声音に温度が戻ってくる。
しっかりしてても、まだ子供だもんね。こんな日もあるさ。
「おやすみなさい、ホップ。よい夢を」
頭を撫でながら、彼に素敵な夢が来ることを願って。
この状態だとちょっと眠りにくいけど、今日はこのままでいてあげる。
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