08


― 出逢うや否や 視線が絡み
― 絡むが否や 愛し合い
― 愛し合うが否や 深い溜息を吐いた



「お出かけお出かけ〜」
「ンーメエー」
「お留守番でごめんね?ちゃんとお土産買ってくるから」

不満そうなヌメたには悪いけど、あたしはルンルンだ。
なんせ今日はシュートシティでお買い物!
ジムチャレンジに向けて必要な物を揃えようと、ダンデさんが連絡をくれたのだ。

「ウエストは太めのベルトで絞って…よし!」

おばさんのネルシャツをアレンジしてワンピ風に。
せっかくのお出かけだもん、ちょっとくらいオシャレしたい。
というわけで、オーバーサイズの服をお借りしました。

「お待たせしましたー」
「あらぁ!かわいくできてるじゃない」
「えへへー」

おばさんも褒めくれてめっちゃ嬉しい。
動きやすいし、ショッピングであちこち動き回るにはいい恰好よね。

「準備はできたか?それじゃあ行こう」
「はーい。行ってきまーす」
「ダンデ、頼んだよ。行ってらっしゃい!」



「わーお。凄い数のお店」
「一番の都心だからな」

こりゃ大都市ですわ。あっちもこっちも素敵なお店がいっぱい!
でも今日はあくまでジムチャレンジの為の買い出し。
ダンデさんもオフではなく仕事の一環ということでユニフォーム姿だ。
お手を煩わせないよう、ササっと済ませちゃおう。

「まずは軽い物から買おう。服屋にするか」
「もしかしてあのお店ですか?やったー」

ちなみにお金はダンデさん持ち。なんせあたしはこの間のバトルでユウリからもらった数百円しかないからね。
トレーナーへの投資なら喜んでするぜ!なんて言ってた。好き。
まあちゃんと返しますけどね。金銭的な貸し借りとか絶対作りたくないし。

「どれもこれもかわいい!」
「気に入ったのを選んでくれ」

ニコニコと見守ってくれるダンデさんだが、他人のお金である以上そうはいかない。
欲しい物はいずれ自分で買うとして、最低限かつ機能も充分な服をいくつか見繕う。

「これで全部です」
「もういいのか?早いな」

あたし意外とショッピングは時間かけない方。すぐ決めるからね。
特に男の人を連れていればスピードアップする方。待たせたくないし。

「会計を済ませてくるから待っていてくれ」
「はーい」

さて次は下着だな。隣の隣にランジェリーショップあったし。
やっとこのかわいくないブラ&パンツとおさらばできるぜ!



「さて…次はバッグやボールだな」
「ちょちょちょ待ってください」
「どうした?」

いやどうしたじゃなくて。下着!服買ったなら次は下着でしょうよ!
でもダンデさんはキョトンとしてる。
あーこれあれかー。ガチでわかってないやつかー。

「あのですね…耳貸してください」
「うん?」

腰を折ってくれるダンデさん。
あたしもちょっと背伸びする。

「下着も買わなきゃなんですけど…」
「あ…すっすまない!気が回らなくて!」

そんな焦ります?いつぞやのように顔を赤くしている。
相変わらずピュアッピュアですね。からかいたくなってきた。

「それともダンデさんが選んでくれます?あたしの下着」
「なっ」

あーん、めっちゃ楽しー!この人めっちゃ慌ててるー!
ダンデさんはこれで買い物しててくれ、とあたしのスマホと引き換えにクレカを渡して去って行った。
男の人をランジェリーショップに連れて行くつもりはないから丁度いいや。



(あったあった!やっぱり紐パンよね〜)

一人で入店したあたしは、お目当てのものを探していた。
Tバッグの紐パン。これ最強。
男の人が喜ぶだけじゃなくって、機能的にも優れてるのよね〜

「紐タイプをお探しですか?」
「あ、はい」

好みのセットを手にして、色で迷っているとスタッフさんに声をかけられた。
やっぱりこんな子供がこんな下着選ぶなんて!って思われてるのかな。
別の勧められたりして。絶対こっち買うけど。

「それ最近デザインが変わったんです。昨日入荷したので、よければお持ちしましょうか?」
「え!?はい、見たいです!」

ニコニコしたおねえさんは、お待ちくださいねとその場を離れる。
おいおい神接客かよ〜好き。

「こちらなんですけど」
「かわいい!」
「かわいいですよね〜ブラもホックがフロントとバックの二種類になったんです」
「絶対フロントホックがいいです」
「楽ですよね〜!」

素敵なおねえさんとしばらく下着トークで盛り上がり。
必要な分だけ購入したあたしは、併設されていたコスメコーナーへと足を運んだ。



「こっちのシャドウはね、若い人向けで特に肌への負担が少なく作られてるの」
「へえー」
「その分、他のブランドに比べると発色が淡いんだけど」
「逆にそれ活かしてぼかした感じのメイクできますよね」
「そうそう!せっかくだからタッチアップしてみる?」
「してみるしてみる〜」

はい、サイコーです。久々のコスメ選び楽しすぎる。
さっきの店員さん同様、子供のくせにという態度を一切出さず接客してくれるおねえさん。
おいおいこっちも神接客かよ〜好き。

「チークはどうする?」
「んー…とりあえずアイメイクだけで」
「オッケー!まかせて」

手際よくアイホールに色を付けていくおねえさん。
その間にも、ナチュラルメイクならこれがいいとか各メーカーの特徴とか、いっぱい話してくれる。

「なんか、あたしみたいなお子ちゃまにはまだ早いかなあ、って思ってたんですけど」

ほら、子供らしくとかそういうのあるじゃん?
化粧なんてまだ早い!ガキのくせに色気付くんじゃない!とか。
でもおねえさんはカラカラと笑った。

「なにそれ!メイクしたい、オシャレしたい、っていうのに年齢なんて関係ないでしょ」
「…!そうですよね!」
「あたしもあなたくらいの年で色々メイクしてたし。もしかして親御さんそういうタイプ?珍しいねー」

そうか、ガラルではそういう価値観なのか。いいなあ。
そうだよね。年齢なんて関係ないよね。
この後おねえさんは厳しい親にも見つからないメイク、なんてのも教えてくれた。
ガラルのおねえさんたち、最高かよ〜!好き。



「すみません、お待たせしました」
「気にしなくていい。俺も電話をしていたからな」

コスメトークでひとしきり盛り上がった後、外で待っているダンデさんを見つけ急いでお店を出た。
契約したらしいスマホを渡されて、ついでにキャンプ道具も揃えたと伝えられる。
どうりで大荷物が足元に…ありがとうございます。

「さて、せっかくだから食事でも…と思っていたんだが」
「?」
「書類に不備があったらしい。今からタワーに戻る必要があるんだ」
「そうなんですね。それじゃあたしはタクシーでお家まで帰ります」

ちょっとヘビーな量だけど、タクシーなら問題ないはず。多分。
でもダンデさんは一人で帰すことはできないと首を振った。心配性かな?

「悪いが一緒に来てくれないか。そう時間はかからないはずだ」
「あたしはいいんですけど、お邪魔になりません?」
「そんなことはないぜ。せっかくだからタワーも見学するといい」

たくさんの荷物を持って歩き出したダンデさんについて行く。
場所を知らないあたしは、その方向が間違っていたなんてまったく気づかなかった。





2021.09.12