「こんなにピッタリな所があるなんて!ありがとうキバナくん!」
連れて来なきゃよかった。
目の前ではしゃぐナナシに今更ながら後悔する。
「この暗さ、この雰囲気…!我らロケット団にはピッタリ!」
我らって言ってるけど、現状お前しかいないからね?
少なくともオレが知る限りはだけど。
「おじょうさんライブ初めてか!」
「初めて!」
「楽しんで行きなよ!スパイクタウンは最高なんだから!」
「うん!」
早速馴染んでるし。
ああして混じると余計幼く見えるな…
「キバナくん、これからライブがあるんだって!」
「みたいだな」
知ってる。よーく知ってる。何回も来たことある。
その度に来なくていいんですがって言われるけど。
「みんな良い人だし、やっぱり此処にアジトを作るしかないよ!」
「誰に向かって力説してんの」
ナナシがスパイクタウンの存在を知ったのは先日のこと。
行きたがる彼女をオレが連れて来たのは今日のこと。
外出時は必ず行き先を告げる、という悪役らしからぬ約束を律儀に守るナナシの口から出たその名前に、これまでオレは何度も待ったを掛けた。
他の町ならいざ知らず、スパイクタウン。
あくタイプのジムリーダーが長を務めるあのスパイクタウンだぜ?
『どうしても…行っちゃダメなの…?』
『そういうワケじゃなくって、あの〜あれだよ。紹介してやるから』
『紹介?』
『ネズとは仲良いからさ、紹介してやるって』
『本当に!?』
ナナシは悪の組織ロケット団の一員。絶対あの雰囲気を気に入るに決まっている。
テキトーなことで誤魔化そうと思っていたオレは、残念ながら盛大に失敗し余計な約束をしてしまった。
理由はナナシのしょげてる姿にチンコがイライラしたから。
正直『イッちゃダメなの…?』の時点で襲うことしか考えてなかったもんな。
そして前報酬としてハメまくったオレさまは、一応の義理を果たしたわけだが。
「どうだい、最高だろネズさんのライブは!」
「すごいです!ひゃいっ、最高でした!」
「(噛んでるし)」
ライブにも嬉々として参加したナナシは、既にスパイクタウンの住民になりかけている。
そのうちエール団の服とか………悪くないかもな。今だってヘソ出してるし。
あのタイツ破いてペロペロしたら泣きながら
「いったい何をしてるんです」
「…ん?あ…おお…ネズか…」
脳内で喘ぎ始めたナナシに夢中で全く気付かなかった。
呆れた視線を投げ掛けるネズは、相変わらずテンションが低い。
ちなみにオレさまの妄想はこの辺で打ち切った。長引くとキバナが元気になりすぎるからな。
「で、俺に用事でも」
「おいおい…普通にライブ見に来たっていいだろ?」
「今までそんなことありましたかね」
痛いところついてくんなあ。
確かにオレさまが来るってことは大体リーグ絡みの用があるからだ。
当然ネズは良い顔をしない。だから昼間に何気なく訪れると警戒される。
「いやまあ用事はあるっちゃあるけど…別に済ませなくていいっていうか…」
「は?」
ぶっちゃけ会わせたくない。
なんせあのチョロいナナシのことだ。すぐネズにぽーっとしてモジモジしてノーガードな雰囲気出すに決まってる。
そっからのお仕置きセックスもいいけど、やっぱり会わせたくない。
「見て見てキバナくん、タオルもらっちゃった!」
「(今来るのかよ!)」
嬉しそうにオレの所へ走ってくるナナシはかわいい。
かわいいけど、会わせたくねえなって思ってるこのタイミングで来る!?
「あ…」
「…どうも」
密かに萎えるオレをさておき、ネズを見たナナシはピタリと動きを止める。
首の後ろを撫で付けながら会釈をするネズに、案の定こいつはソワソワしだした。
「(仕方ねえ紹介するか…)ネズ、こいつは」
「また新しい女ですか」
「その言い方止めてくんねえ!?」
取っ替え引っ替えしてるみたいに言うなよ!
普通にお付き合いして普通に別れてるだけだっつうの!
「勘違いするなよナナシ。オレさまチャラ男じゃないからな?優しいキバナくんだからな?」
「本命ですか。ずいぶんと必死なことで」
「お前いつも用事持ってくるの根に持ってるだろ!」
ネズはからかっているだけのつもりでも、ナナシはどうかわからない。
異性関係の経験が殆どないっていうかオレしか知らないんだぜ!?変にショック受けられたらマジで困るんだよ!
「ナナシ、これはネズの冗談で」
「あ、あの!私のパートナーになってください!」
「……は?」
「はぁ…?」
→