ニューイヤーズ・イヴ 1


「カウントダウン?」
「そ。ニューイヤーズ・イヴの大事なイベントだぜ」

クリスマスの後はお正月。
そういった流れが当たり前だった私は、キバナくんの話に驚いた。

「ナックル、エンジン、シュートそれぞれのスタジアムでカウントダウンするんだ。イルミネーション付きでな」
「それでナックルジムがピカピカしてたんだあ」
「ピカピカってかわいいなおい。ピカチュウですか?」
「ち、違うよ。クリスマスが終わっても光ってたから」

今年も残すところあと3日。でもキバナくんはすごく忙しそう。
12月最大のイベントはクリスマスだと聞いていたので、25日が過ぎたら落ち着くと思っていた。

「最後の最後まで、リーグの人たちは忙しいんだね」
「まあな。でもめちゃくちゃ評判いいんだ、すげえ盛り上がるし!ライブ中継で一斉にわーってさ」
「わあ〜」
「わあ〜ってかわいいなおい。当日の練習ですか?」
「ち、違うよ。盛大なんだなあって」

ガラルの文化は華やかで賑やか。年越しにもその性格が表れている気がする。
一方、カントーで生まれ育った私には馴染みがなくって、少し、気後れしてしまう。

「それじゃあ、キバナくんはお仕事なんだね」

大晦日。ガラルではニューイヤーズ・イヴと呼ばれるその日、私はいつも家の中で過ごしている。
先輩と買い出しに行って(ニャース先輩とコジロウ先輩はいつも大掃除係)、お蕎麦の用意をして。
コタツで暖を取りながら一年の反省会、という名のおしゃべりをして…

「そういうこと。ナナシも来るだろ?」
「え!」
「えっ嫌なの?」
「い、嫌じゃない、けど…」
「けど?」
「わ、私、そういうの、参加したことなくって」

当日、キバナくんやナックルジムの人たちはきっと準備で私の周りにいないはず。
大勢が集まるイベントで、お恥ずかしい話、どうすればいいのかわからないのです。
だってそういう時、いつもロケット団として先輩たちとお仕事してたから…

「なるほどねー。ま、大丈夫だから来なって」
「う、うん…」
「ちゃんと考えてっから。オマエを独りになんてするかよ」

八重歯を見せてニヤリと笑うキバナくんはかっこいい。
なんだか恥ずかしくなって、私は持っていたティーカップの紅茶をグッと飲み干したのでした。



「あーあー。急に飲むから」
「んっ、けふっ、えふっ」

照れを誤魔化そうと一気飲みして咽たナナシの背中を擦る。
涙目でちょっと苦しそうにしている表情は夜のアレを想像させ…これ以上は止めておこう。

「天気はバッチリだけどマジで寒いから。暖かい恰好して来なよ」
「う、うん」
「帽子も必須な!この間オレさまがプレゼントしたニット帽あるだろ?」
「あ…それとカジッチュセーターで大丈夫かな?」
「カジッチュセーターはまた今度にしようぜ」

いつだかナナシが買ってきた『ギブミー♡ユアカジッチュ』Tシャツ。
オレにはヒットしないそのデザインがまんまセーターになった物をなぜかナナシは持っている。
いつの間に買ったんだ…ルリナとショッピング行くようになって多少マシに…これ以上は止めておこう。

「あのセーター、防寒には心もとないから」
「そうかな…?」
「だってカジッチュはドラゴンタイプだぜ?寒さは大敵だろ?」
「そっかあ」

意味不明な理屈を展開しているというのに、ナナシはすんなり納得してしまった。
オレが神妙な顔でそれっぽく語ると(特にドラゴンタイプ関連の話は)あっという間に信じてしまう。
こんなオマエを人込みに放置なんかするかよ。まさに鍋を背負ったカモネギだぞ。食べてくださいって言ってるようなもんだ。

「んじゃ、オレさまがとびっきりのコーデしてやるよ」
「えっ。あ、じゃあ…よ、よろしくお願いします……♡」

顔を赤くしてモジモジするナナシは何を考えているのかバレバレだ。
イロイロと着せ替えさせられて、そのままセックスに持ち込まれると思ってんだろ?

「おう。キバナさまに任せときな♡」

もちろんセックスに持ち込んだ。