彼が望む最愛 4


「昼間、ディルックの旦那と何を話していたんだ?」
「にゃ……」

食後、ソファで共にくつろいでいたナナシはガイアの問いに動揺した。
まさか本人を前にしてあなたのことです、とは流石の彼女も言えない。

「ぇと……」
『 そんな男からは一秒でも早く離れなければいけない 』

途端にディルックの眼差しが呼び起こされる。
尚のことガイア自身に伝えることはできない、どう答えれば良いのだろう。

「悪い、困らせるつもりはなかったんだが―――俺に言えないことなら、答えなくていいぜ」
「!!!ち、ちがう!」

困ったように笑うガイアは、ひどく寂しそうで。
それを見たナナシは自分が泣きそうになる。
彼に非は無いのだ。そんな表情をさせたことが悲しかった。

「…ガイア先輩の…『この世界でオレのもの』…どういう意味って…」

しどろもどろになりながら、懸命に説明する。
彼がよく口にするセリフを上手く理解できなかったのだと。
拙いながらもナナシの言わんとしていることを知り、ガイアはついに吹き出した。

「ブハッ!なんだ、そんなこと考えてたのか?」
「…だって…よくわかんないもん……」

無知さを改めて披露してしまったのかと、居た堪れない気持ちが猫耳と尻尾に現れる。
リサに倣ってよく書物を読んでいる彼女だが、覚えは良くないのだ。

「それはな。『お前が俺だけのものである以上、俺もまたお前だけのもの』ってことだ」
「?????」

ますます混乱する少女を愛おし気に見つめながら、ガイアは頬を撫でてやる。
子供に言い聞かせるような口調だった。

「つまり、『ナナシだけのガイア』ってことさ」

シンプルな文章でようやく理解でき―――きょとんとしていたナナシは、次の瞬間、嬉しさに包まれた。
力無く垂れていた尻尾もピンと立っているのが自分でわかる。

「ナナシの、ガイア先輩?」
「ああ」
「ナナシだけ?」
「お前だけだぜ」
「……にゃふふ……♪」

人気者のガイア。誰からも慕われる、強くてみんなが憧れる、騎士団の頭脳。
そんな彼から直接、独り占めする権利を与えられるなんて。

「ガイア先輩♪ナナシだけの、ガイアせんぱい♪」

やっぱり、ガイアは世界で一番素敵な人だ。
ディルックだって、きっと恋人がガイアだと知っていたら、あんなことは言わなかったはず。

「機嫌は直ったか?お姫様」

軽々と抱き上げられて向かうのは、二人の寝室。
この後どうなるか、ナナシも知っている。

「ここからは恋人同士の時間だぜ」

それがとても幸せな時間であることも。