「…と言っても、どうするかあ?」
「ガイアに話を聞いてみよう」
なんだかんだ頼りになる騎兵隊長は、幸いにもロビーにいた。
空たちが訪れたことを知っていたのか、向こうから近寄ってくる。
「よっ。来ていたんだな」
「ガイア!オイラたち聞きたいことがあって…」
掻い摘んで今回の相談事を説明し協力を仰ぐ。
一頻り聞いたガイアは顎に手を当てて考え始めた。
「ナナシと話がしたいんだけど、どこにいるか知ってる?」
「この時間なら家だな。案内するぜ」
伴われて本部を出た空は、道順に疑問を覚える。
ナナシがいるのは女子寮のはずだが、どうもルートが違う。
「今は寮を出て暮らしているんだ」
訝しんでいるのを察したガイアが先回りする。
そうして着いたのは、城内の賑わいから少し外れた小さな家。
「庭にいるはずだから、そっちに回ろう」
「おいおい!勝手に入っていいのかよ」
「嫌がるんじゃない?」
「大丈夫さ」
勝手知ったる体でズカズカと入るガイアに焦る二人。
だが本人はどこ吹く風といった様に涼しい顔だ。
「ナナシ」
「ガイア先輩おか……。……パイモンと、空?」
「おう!邪魔するぜ」
「お邪魔します」
彼の言った通り、小さな庭の水辺で何かをしていたナナシが立ち上がる。
ニオイを感じ取ったのか、ガイアの後ろに控えている旅人と相棒に控え目な挨拶。
「こいつら、お前に話があって来たんだと」
「話?なんの?」
首を傾げる彼女の足元で、生き生きとしたドドリアンが咲き誇っていた。
「…というわけで、オイラたち何でレザーを避けるのか聞きに来たんだ」
「………」
「話せる範囲でいいから、教えてくれないかな」
テーブルに着き、ホットティーで一息ついた後。
来訪の目的を知ったナナシは、難しい顔で艶やかな赤いカップを眺めている。
「ナナシ、これはリサも心配していることなんだぜ」
「……リサ先生が?」
「ああ」
難航しそうな空気が広がる中、ガイアが助け舟を出す。
向かいに座った先輩の発言にナナシも顔を上げた。
「二人しかいない弟子同士の仲が悪かったら、誰だって心配するさ」
「リサ先生が心配……」
細かい装飾の青いカップで優雅に紅茶を嗜むガイア。
諭されたナナシは黒い猫耳をぺしゃんと力無く伏せてしまった。
それがどうにも可哀想で、パイモンも空も慌ててフォローに入る。
「そ、そんなに深刻ってわけじゃないぞ!」
「そうそう!レザーも仲良くしたがってるから、それで!」
「……レザーは……」
「レザーは?」
「………オオカミのニオイ、するもん」
しょんぼりとしたまま口を開いたナナシに、またもやぽかんとした二人。
一方でガイアは驚きもせず見守っている。
「それに、ナナシ、オスはきらいだもん」
「お、オスって…」
「男のヒトはきらいだもん」
「き、嫌いなんだ…」
「空!お前まで落ち込むなよ!」
衝撃の初耳情報に、今度は旅人が落ち込む。
自分も男性なので、知らなかったとはいえやはりショックだ。
「だから…レザーがきらいじゃなくて…オオカミだし、オ…とこの人、だし」
「今オスって言おうとしただろ」
「言ってないもん」
ぷん、とそっぽを向くナナシに呆れながら突っ込むパイモン。
理由は判明したものの、果たしてどうすればいいのやら。
→