「そういうことだ。ま、ちょっとずつ馴れさせていくしかないな」
「もしかしてガイア知ってたのかよ!」
「当たり前だろ。俺も最初は威嚇されてばっかりだったぜ?」
「教えてくれればいいのに…」
恨めしそうに自分を見遣る空たちを笑い飛ばすガイア。
相変わらず食えぬ男である。
「ナナシはなんで男が嫌いなんだ?」
「さあな。記憶を無くす前に何かあったんじゃないか?」
軽い口調で歩みを進める彼に、空はハッと気づく。
ナナシは記憶喪失の状態で保護されモンドにやって来たのだと。
「でもレザーを避ける理由はそれだけじゃないと思うぜ」
「どういうこと?」
「リサを取られた気がするんだろう。あいつにとっては、姉貴とか母親みたいなものだからな」
当時、衰弱していたナナシを治療し介抱したのはリサだ。
その後も日常生活から魔力のコントロールまで、ありとあらゆる面をサポートしてやった。
結果、ナナシは彼女を先生と呼び敬愛しているのだが。
「嫉妬ってこと?」
「そういうことだ。ま、”リサ離れ”する良い機会じゃないか?」
リサ離れ、か。
パイモンと会話しながら先を行くガイアの背中を空は眺める。
一人にしては大量の食材。
無断で通った家の門。
咲き乱れる庭のドドリアン。
自然と座った向かいの席。
対になるデザインのティーカップ。
「……ガイアって……」
『 今は寮を出て暮らしているんだ 』
「ん?」
「どうしたんだよ空」
「…何でもない」
”ナナシ離れ”は、果たして起こり得るだろうか。
→