生徒R.A.Bの目撃談 - 春風
2

それからの僕は、いつの間にか彼女の姿を視界の何処かで探すようになっていた。けれども、在籍するホグワーツ生徒約千人の中から##NAME2##先輩一人の姿を見つけ出すことは、かなり至難の技である。
現に今日も僕は##NAME2##先輩のことをかれこれ二時間は探しているが、彼女を中々見つけることが出来ないのだ。


「………」

ここで酷く重たい溜め息を吐いてみたい気分ではあるのだけれども、ブラック家の次男として目に余る醜態を見せることが出来ないために内心だけに留めておかなければならない。
…彼女が見つからない理由は、僕だって薄々分かっている。あの先輩は身長がかなり小さいし、更に兄さん達のように目立つ存在ではないからだ。まぁ、兄さん達のような悪目立ちすることが良いとは断じて言わないが、彼等が校内一有名でありその名を(主に悪戯で)轟かせていることは紛れもない事実である。

でも流石に、ここ数日掛けて探していても見つからないとなれば、中々に僕だって辛いものがある。今も気分を紛らわせようと思って図書館へと来たは良いものの、口からは小さな溜め息しか出て来ない。


ピトッ


「「あ…」」

そんなことをぼんやりと考えながら適当な本に手を掛けると、僕の手と誰かの小さなの手とが重なった。
しまった、やらかした。ブラック家の看板を背負っている者として、他人とは余り関わりたくはないのだ。だから、このようなトラブルはなるべくは避けたいものなのに。
僕は慌てて、その本から手を離した。


「あ、その、ご、ごめんなさい!」
「あ、いえ。僕も考え事をしていたので……っ?!」
「っ、あ……!」


こんな偶然が、あるのか。
顔を上げてその声の相手を見た僕は、絶句した。

──何故ならそこにいたのは、僕があれだけ探していた##NAME2##先輩本人であったのだ。


「………」
「………」


その##NAME2##先輩の瞳は、これでもかと言うぐらいにまで大きく見開かれている。でもまさか、あんなに探していた##NAME2##先輩の姿を、こんな所で見掛けるとは。


「……ぁ…」


僕は口を開き掛けて、止めた。
…まず僕は、何であんなにも##NAME2##先輩のことを探していたんだろう?見つけたとしても、何と話し掛けようと考えていたんだ?改めてそう考えると、先程までのあの勢いは何処へ行ったのやら、僕は何も言えなくなってしまった。


「………その本は貴女がお読みになって下さい。僕は結構ですから」


結局僕の口から出たのは、そんな事務的な言葉。
嗚呼、こんな筈じゃないのに。苦い感情を押し潰すように下唇を噛み締めながら、僕は##NAME2##先輩に背を向けてそこを立ち去ろうとした。

しかしである。


「…ブ、ブラック君!ま、待って下さい!」
「!」


嗚呼、この人は僕の名前を覚えていたんだ。……あ、隣で兄さんと話していたんだから覚えていて当然か。変に麻痺して感覚のないその脳内で、そんな下らないことを考えた。


「あ、あの…。こ、この前は、本当にありがとうございました」


そう言って先輩は、ぺこりと頭を下げて来た。…彼女が頭を下げてお辞儀をしたのは、出身国の文化性からか。

けれど、何でだろう。怯えたように僕の目を見ようとせずに、吃りながら話す先輩を見ていると、何だか苛々してしまう。


「…いいえ。僕が勝手にしたことですので、気にしないで下さい」


僕はそこで言葉を切り、踵を返して立ち去った。そんな僕に対して、彼女は何も言おうとはしなかった。
嗚呼…何だか、期待外れな気持ちだ。具体的に彼女に何を期待していたのかと言われてしまうと、明言することは出来ないのだけれども。


「………」


そうだ。そう言えば彼女は、お腹にいる兄さんの子を、産むのであろうか。
そんなことを、ぼんやりと考えた。

- 1 / 3 -
春風