赤兎 - 春風
懊悩焦慮

##NAME1##とのいつも通りの言い合いが終わると、神威はまたガツガツ食べ出した。
##NAME1##は用を済まそうと立ち上がった。食事の乗ったトレイはそのまま置きっぱなしで、皿にはほぼ大半が残されている。


「ごちそうさま」
「………」

神威の蒼い目が、遠ざかって行くその小さな背中を追った。


**********


##NAME1##が廊下を歩いていると、阿伏兎と出会った。


「阿伏兎ー。何だか頭が痛いんだけど、何か薬持ってない?」
「頭?」


阿伏兎は、自分自身より頭ニ個分くらい小さな##NAME1##に合わせる為に、少し腰を屈めた。

そして、##NAME1##の額に自分の手の甲を当てる。


「……って、あちっ!」

阿伏兎は思わずその手を引っ込めた。それもその筈、##NAME1##の額は燃えるように熱かったのだ。


「お前さん、コレ、熱あんぞ!!」
「あ?嘘付け」
「嘘なんか付いて何の得がある!お前さん自分で体温計使って測ってみろ!」
「バカでもガキじゃあるまいし、私が風邪なんて、引く…か、よ……」


フラッ

するといきなり、##NAME1##の体が前のめりに倒れ込んだ。


「っと!」

阿伏兎は慌てて、倒れ込む##NAME1##の体を抱き止める。


と、そこに─……


「あ、いたいた。ねぇ阿伏兎〜」

──間が悪いとしか言いようがない。##NAME1##のことに関しては誰よりも自己中な大魔王がやって来てしまったのだ。


神威が、丁度阿伏兎で##NAME1##が見えない方向から歩いて来た。

阿伏兎は、思わずピシリと固まった。神威はそんなことには気付かずに、呑気に阿伏兎に近付いて来る。


「阿伏兎、##NAME1##どこに行ったか知らな―……!?」

そこで神威は、阿伏兎の腕にいる##NAME1##を見つけ、その目を見開いた。


「ッ、##NAME1##!?」

神威は阿伏兎の手から##NAME1##を奪い、自分の腕の中に収めた。


「………阿伏兎?これは、どーゆーことかナ?」

神威が阿伏兎に向けたのは、完璧なまでの満面の笑みだった。その笑みを向けられた阿伏兎の顔には、一気に冷や汗がたくさん浮かんだ。


「……黙ってないで、早く説明しなよ。…大方、##NAME1##が自分から倒れ込んで来たんだろ?」
「…は?」

阿伏兎の予想に反して、神威は##NAME1##の額に手を当てるなり、その眉を顰めて言った。

「うわ、凄い熱だね……」

今や##NAME1##の顔は、真っ赤に火照っている。
どうやらこの様子であれば自分が怒られることはなさそうだと判断した阿伏兎は、ホッと胸を撫で下ろした。


「余りに食欲がなかったから、急いで食べ終わらせて心配して付いて来たんだ。…これ、##NAME1##は大丈夫だよね?」
「あ、あぁ、多分ただの疲れだろーよ。…実の兄貴とも会ったんだし、自分でも気が付かないうちに気ィ張ってたんじゃねーのか?」
「………」

神威は、自分の腕の中で荒い息使いをしている##NAME1##を見て、黙り込んだ。##NAME1##はとても苦しそうに顔を歪めている。


「……##NAME1##がもし大変なことになったら阿伏兎のせいだから」
「俺ェェェ!!?」


しかし神威は「嘘だよ」と言うなり、##NAME1##を抱き上げスタスタと歩いて行った。


「……団長、アンタ素直じゃねーなァ……」

阿伏兎は、##NAME1##を俗に言われる“お姫様抱っこ”をしている、三つ編みの後ろ姿を眺めながら静かにポツリと呟いたのだった。

- 2 / 7 -
春風