赤兎 - 春風
四六時中

ポタッ ポタッ─……

太陽光が入り込まない薄暗く不気味な雰囲気が漂う路地裏に、女は佇んでいた。病的なまでに白いその手の細長い指先からは、止め処なく鮮血が滴り落ちている。辺りには、血液独特の鉄分の匂いが嫌な湿気とともに立ち込めていた。


「………」

女は無言のまま、懐から取り出した真っ白な手拭いで、その手にべっとりと纏わり付いた血を指先まで丁寧に拭き取る。そして、血で汚れて使い物にならなくなってしまったそれをその場に放り、屍が累々と横たわるその地の反対方向に向かって歩き出した。


「##NAME1##〜!任務お疲れ様♪ 」

──その場の空気に似合わぬ、間延びした何とも言えない間抜けな声が響いた。語尾の音符マークは、この凄惨な現場においては余りにも場違いである。

その途端、あれ程にまで無表情だった女は、とてつもなく不機嫌そうに顔を顰めて、その眉間に渓谷の如き深い皺を刻んだのであった。


第壱章 四六時中

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春風