赤兎 - 春風
煩悩具足

##NAME1##による手当てが終わった阿伏兎は、その場の空気を読んで、そそくさと足早に部屋を後にした。残されたのは、勿論##NAME1##と神威の二人だ。
一仕事終えた##NAME1##は、外を眺めていた。吉原に来たのは初めてであって、ここで見るもの全てが##NAME1##にとっては珍しい。

しかし、一人外を眺めるその姿は花魁さながらで絵になっている。それを見兼ねた神威が言った。


「そんなに吉原が珍しいかい?」
「あぁ…初めて見たもんばっかりだ」


一方、神威は複雑な心地だった。吉原という淫らな街に、自分の惚れている相手、つまりは##NAME1##が花魁の姿で自分の目の前にいる。
##NAME1##の女らしい姿を見れて嬉しいという感情、だが、反面この姿を他の男に見せたくないという独占欲と戦っていた。


──あ、ヤバい。襲いたくなって来た。


その上、理性までもが限界になって来た。しかしそんな神威の様子に気付く素振りも見せない##NAME1##だった。
ついに神威は、思い切って口を開いた。


「ねぇ##NAME1##。…俺、決めたよ」
「……何をだ?」
「…必ず君をお嫁さんにする。…覚悟してなよ」


かなり突然の告白に、##NAME1##は神威の双方の目を見つめ返した。

だが―……


「…もう知らねェ、勝手に言ってろ。……俺なんかがお前に釣り合わないってのが、いずれ分かるさ」


──##NAME1##は、難攻不落の城のように頑固であった。


更に、##NAME1##は続けた。


「俺なんかみたいな女の生まれ損ないを嫁に?止めとけよ、後悔すんぞ」
「何言って―」
「よし、俺ちょっと様子見て来る」


そして##NAME1##は無理矢理強引に神威の言葉を遮り、素早く立ち上がった。そして、「勝手な行動をするなよ」と神威に念を押し、部屋を後にした。



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──まただ。##NAME1##はまた、自分のことを見下した発言をした。


「俺、##NAME1##の過去、しっかり知らないんだよな」


神威は一人呟いた。

##NAME1##は、あまり自分を語らない。いつも身近にいる神威さえもが、##NAME1##の出生については詳しく知らなかった。


──##NAME1##が周りに、俺に、張り巡らしている心の壁は消えないのかな。そう思う俺は、##NAME1##にベタ惚れであることを認めざるを得ないんだろう。


神威は、モヤモヤが残る頭を振った。そして、煩悩を追い払うべく立ち上がる。


──この後、神威はまた殺戮者へと変わった。向かって来る百華の者を、大量に殺した。


煩悩を振り払う様ように、未だ頭の片隅に残る##NAME1##の残像を振り払うように、虐殺を行ったのだった。



- 続 -

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春風