君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「沖田総司。…話があるんだけど、いい?」


自分の二年A組の教室でのお昼休み。クラスメートで隣の席の一君も、チラリとこちらを見て、すぐに興味が削がれたのか、目を剃らし読んでいた本に視線を戻す。

相手は、背の低めで美人な女の子。あまり見ない顔だと思ったから、多分一年生なんだろう。
けれど僕は笑って言ってあげた。呼び出し、更には女の子からのなんて、良くあることだしね。


「いいよ」
「こっち」

するとその女の子はぶっきらぼうにそう言って、廊下を凄い早足で歩き出した。購買で買った食べ掛けのクリームパンを置き、僕は少し早足でその背中を追い掛ける。早足で歩きながら思うのは、この子ちょっと苦手かも、って。

廊下を歩きながら、一年生だけれど僕への言葉遣いはタメだった、という矛盾にふと気付く。


僕は改めて彼女の背中を見つめてみた。

小柄ながらも身体は早熟なのか、胸はかなり大きく己を主張していることに気が付いた。スカートは、この学校の女の子にしては珍しく膝下丈で、けれどそこから伸びる脚はすらっと細くて綺麗なんだろうと想像がつく。単なる真面目ちゃんかと思ったら、その漆黒のサラサラと風になびく綺麗な髪をくくっているのは、校則違反の大人っぽいモチーフが付いたゴムで。


――可愛いな。僕の好みだ。

素直にそう思った。そうして女の子を見つめていると、その脚がピタリと止まった。


ピュゥッ―………

強めの風が、自分の髪の毛を浮かす。いつの間にか屋上まで来ていたことに、やっと今気が付いた。
すると、その子が振り返って噛み付くように言った。


「ねぇ。アンタ、千鶴に何したの」
「………は?」


余りにも予想外の内容のその子の唇から出た言葉に、思わずすっとんきょうな声を発してしまった。だって千鶴ちゃんは、俺がつい最近別れた半年の間も付き合っていた子。

しかし目の前にいるのは、大きな目で俺を睨み付けて来るその子であって、千鶴ちゃんじゃない。
瞳の色は、ハーフなんだろうか、綺麗な群青色。今時にしては珍しく、化粧もされていないだろうその顔、しかしとても綺麗だ。唇が想像以上にとっても潤ってて見入ってしまう。


――一体、何の話だろう。


こんな空気なのに不謹慎なのかもしれない、けれどこの先の展開が、僅かに楽しみに感じてしまったんだ。

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春風