君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「千鶴ちゃん、ちょっと」
「あ、…せ、先輩」


ある日の一限目が終わってすぐ。
私が次の授業の用意をしていると、沖田先輩がやって来て、ちょちょいと廊下から手招きされた。

すると案の定、クラスの女の子から鋭い視線を送られる。また今日の放課後は呼び出しかな、なんて考えながら、私は廊下に出る。背中には、矢の如く女の子の厳しい目が容赦なく向けられた。


「いきなりごめんね。今日は蘭ちゃんは来てる?クラスに姿が見えなくて、でも平助も知らないって言うからさ」
「今日は……その、蘭ちゃん曰くの“社長出勤デー”らしいです」
「っぷ、アハハ!何それ!」


そう言って可笑しそうに笑った沖田先輩。私は思わず先輩の笑顔に見惚れてしまって、私の口元にも笑みが浮かぶ。

でも、これは周りから見たら私と沖田先輩が談笑している様にしか見えないんだよね。そうは思いつつも、スカートのポケットから携帯を出して、蘭ちゃんに悪いとは思いつつも沖田先輩に証拠のメールを見せた。


From:蘭ちゃん
To:千鶴
Sub:(no title)
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今日は社長出勤デーだから、先に行って。

ごめんね。

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「へぇ〜やっぱり仲が良いんだね。そうだ、ねぇ千鶴ちゃん」


―――蘭ちゃんのアドレス、教えてくれない?


その言葉に、私の心臓はドクッと音を立てて反応した。


「それとも、勝手に教えて貰ったら、蘭ちゃんは怒るかな。どう思う?」
「だ、大丈夫だと思いますよ」
「そっか、良かった」


そう言ってはにかんだように笑う沖田先輩に、私は苦笑いして蘭ちゃんのアドレスを教えたのだった。
私の胸中に広がるこの感情が嫉妬なんだと気が付いたのは、その直後。

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春風