チロルチョコ3


萩原研二くん。高校二年生。身長174cm、体重は58kg。三度の飯よりチョコが好き。直接紹介してくれようとしたらしい松田の親切心から見事に逃げ出した#ちか#は、教室に戻ってきた松田から基本情報を舌打ちしながら教えてもらった。貢ぐコーラが更に一本増えた。

最近萩原がチロルチョコ持ってたから怪しいと思ったんだとか、#藁科#がマジ逃げした後萩原楽しそうに笑ってたぜとか、#ちか#が聞いてもいないことまで話す松田はいつになく饒舌でかなり面白そうにしていた。


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もちろんその日もバイトがあった#ちか#は逃げずに出勤し、チロルさん改め萩原もいつも通りに来店した。ただ、目の前で逃げ出した前科持ちの#ちか#は一方的に気まずさを感じて、タイミングよくバックヤードに逃げはしたが。
とはいえそのくせにチロルさんの動向は気になった#ちか#は、萩原がいなくなったのを見計らって店内に戻り夏希に様子を聞いた。そうすると店長と夏希は口を揃えて、一周して何も買わずに帰ったと答える。もれなくニヤニヤしながら。くそ、面白がってる。

「夏希さんどうしよう。わたしチロルさん怒らせたかなぁ」
「どーかなー?今日見た感じはいつもと変わらない感じしたけど?何?学校でなんかあった?おねーさんが相談のったげよっか?」

イエスと答えるとじゃー外で待ってるからと綺麗な笑みを残して夏希さんはロッカールームを後にした。待たせては行けないと、のろのろとした自分を律して#ちか#は手を動かす。セーラー服をかぶって、スカーフを結ぶ。よし、とリュックを背負ったところで派手な音を立ててロッカールームのドアが勢いよく開けられた。

「あれ夏希さん?」
「#ちか#ちゃん!」
「え?」
「帰れ!今すぐ!」

え、相談は?との問いには今日はなし!と断言され、ぐいぐい背中を押されて自動ドアをくぐった。その先にいたのは、帰ったと思っていた萩原だった。

「え?」
「ねえ藁科さん。問題です」

ガードレールに座るように体重を預けていた萩原が立ち上がる。背後にあったはずの夏希の気配は既になく、店内からガラス越しに二人の様子を伺っていたが、目の前の状況を処理仕切れていない#ちか#には気付けるわけもなかった。

そのまま歩を進めた萩原は、これまでにないくらい#ちか#に近付いて、今日何を買いに来たでしょうか、と問うた。これは流石に#ちか#でもわかる。

「チロルチョコ!」
「はずれ」
「じゃあ何」
「もう、本当に鈍いなぁ。他の人はみんなわかってるのに」

意味わかんない。レジで萩原のために50以上のチロルチョコのバーコードをスキャンした記憶があるのだ。それ以外には考え付かないのに、何故か萩原は呆れた。呆れたいのはこっちの方だ。

「これだけしてればわかるでしょ。松田だってわかってたのに」
「チョコが大好物って松田くん言ってたよ」
「それは松田の嘘。あのね、俺は、今日、#ちか#ちゃん買いに来たの」
「………えっと、チロルさんて」
「は、ぎ、わ、ら、け、ん、じ」
「萩原くんてわたしのこと好きなの?」
「そう。やっと伝わった?」

言い終えない内に萩原は#ちか#の両手を引いた。思わぬ負荷によろけた#ちか#は待ち構えていた萩原の腕の中にすっぽりと収まった。

「一緒に帰ろう」



(170529)


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