「魔物退治の手伝い?」
「そう。まあアタシだけでもなんとかなるけど、暇ならどう?」

 宛てもない旅をのんびりとしていた私とバアルさんだったがたまたま寄った街でメドゥと出会った。星トモのみんなで集合することは定期的にしていたがこうしてばったり会うなんていうのは初めてだ。ちなみにバアルさんはいつもの音楽活動へ赴いている為不在である。
 時間があるなら近況報告でも、と誘ってみたがメドゥは「頼まれ事があるのよね」と話したそうな顔で眉をさげる。それを私が何となく詳細を訊ねるとメドゥは思いついたように依頼の手伝いを提案してきたのだった。

「バアルとは夜に合流なんでしょ?それまでには終わるわよ!行きがてらに話す時間もとれるしね」
「確かに。…うん、いいよ。やろう!案内して!」

 他でもないメドゥの頼みならば請けてあげたいという気持ちもあり私はその手伝いを承諾した。バアルさんへの連絡は街にいるよろず屋さんへ代わりにしてもらうようお願いをして私とメドゥは街から離れた森へと向かう。

「サテュロスから少し聞いたけどアイツと上手くやれてるみたいね」
「アイツ?…バアルさんのことかな」
「何もされてない?」
「うん。むしろいつも気にかけてくれていい人だよ」
「まあ口悪いし陰湿だけどそういうところは…その、信頼におけるわね」

 ちょっとだけ照れくさそうにバアルさんのことを話すメドゥは相変わらずだった。言ったら怒られるだろうけどバアルさんとメドゥは似た者同士だとしみじみ思う。きっとこれも本人が目の前だと絶対言えないんだろうなあ。見えないように小さく笑う。

「もう島の外の世界には慣れた?」
「どうだろう…慣れたといえば慣れたかな。ああやってバアルさんがいない時も街をうろうろできるようになったし。いろいろ教えてもらったおかげかも」
「じゃあそのうち一人で行動するのも考えてるわけ?」
「…一人、か」

 そういえば私がバアルさんと一緒に行動する理由はまだ自分が覚醒して間もなく、自分が住んでいた島から出たことがなかったからだ。何も知らない私がいろいろ一人で行動するのは心配だから、ということでメドゥとバアルさんの善意がはたらいて今の私がいる。そうか、私がいろいろ学んで何とかなりそうな目処が立ったら一人で行動するべきなんだ。ナタクさんもサテュロスちゃんも一人でいろいろとしているし、それが当たり前なのかもしれない。
 メドゥの言葉に私は何故か気持ちが少しだけ落ち込んでいた。別に一人が嫌というわけではない。今までだって一人で生活してたのだから。だけどこの今のバアルさんとの生活はあまりにも心地が良くてこれがなくなるのは嫌だな、と感じている自分がいた。

「…どしたの?ナマエ」
「あ、ううん!なんでもないよ。そろそろ到着しそうだね」
「さて…ぐずぐずしてたら置いて行くわよ!ナマエ!」

 メドゥに話しかけられて意識を目の前の依頼へと向ける。とりあえず今はこの手伝いを片付けよう。これからのことを考えるのはまだあとでだっていい。私は頭を振って気持ちを切り替えると久々に武器を握って大量発生している魔物の群れに飛び込んだ