ジータさん達のおかげで何とか自分の心の整理をすることができた私はこの後の行動を考えあぐねていた。
 話をしている間にビィくんがメドゥに状況の確認の為に一度騎空挺へ戻るようにと伝えに言ってくれたおかげでメドゥとは合流できたのだが、結局話をしてみたけれど大したことは教えてくれず何処かへ去ってしまったという事実を知った。
 まあ二人のことだから言い合いに発展してしまったのだろう。そこは何度も見てきているから何となく想像がついた。しかしそうなるとバアルさんが何処へいってしまったのかがわからない。

「それならお役に立てるかもしれません…!」

 ルリアさんが意識を集中させて何やら気配を探り始めた。メドゥが話していた星晶獣を探る力がある、というのはどうやらルリアさんが持っている力だったらしい。人間(だとは思う)なのにそんなことができるんだ、と感心しながら彼女の探知の結果を待つ。
 しばらくするとルリアさんはなんとなく確認できたのかとある方角を指差した。

「…たぶんですけど街の中にいると思います。あっちの方向の一点に集中してるから…多分動いてないです。此処からだと正確な位置まではわからないんですが…」
「…多分取ってる宿、あっちだったと思う」
「もしかしたら下手に動かずに待っててくれてるのかもね」

 ジータさんがそういった憶測を立てる。私がジータさん達と一緒にいることはメドゥが伝えてある。みんなと一緒に居る以上は身の危険には曝されないと考え、もしかしたら気持ちの整理をしようとていたことを汲み取ってくれているのかもしれない。これもまた憶測だし私がそうであってくれたらいいな、なんていう妄想にすぎないけれど彼ならそういうことをする、と少しだけ自信があった。彼は言葉にするのが苦手だけれど、そういう心情を察知をするところは誰よりも優れているのだから。

「ありがとうございます。一度戻ってみます」
「…気を付けなさいよ。何かあったら行くから」
「うん。メドゥにはまた助けてもらっちゃったね」
「アンタは変に一人で抱えちゃうんだから。…もっとアタシに頼っていいし自分にも自信持ちなさいよね」

 メドゥの言葉に私は頷く。彼女なりの励ましはいつだって少し棘があるけれど私を想っての言葉だから温かく感じた。

「皆さんもありがとうございました!」
「はい!また会いましょうね。ナマエさん!」
「ちゃんと話せるといいね。頑張って」
「おうよ!何かあったらオイラ達がいつでも行くぜ!」

 ジータさん、ルリアさん、ビィくんにお礼を伝えればみんなは元気に送り出してくれた。騎空挺を降りて静かな街を進んでいく。
 一人になると少しだけ不安が心に落ちる。やっぱり自分の気持ち、というのはしっかり理解できているわけではない。ちゃんと伝えられるかはわからないし、ひょっとしたら拒絶されるかもしれない。けれどどれもやっていないのだからどう転ぶかだってわからないのだ。まずはやってみて、それから考える。そういうのも悪くない、と思う。

「こんな風に悩むなんて、考えもしなかったな」

 きっと元居た島にずっと居たらこんな経験はしなかっただろう。ぼんやりと退屈を感じながら生きて何も見出さずに活動を終えていたかもしれない。
 それはそれでいい、と思う星晶獣もいるのだろうけれど、少なくとも今の私はそれは嫌だな、と思う。自分の目で世界を見て、聞いて、誰かと接して、喜んで、怒って、泣いて。いろんな経験をするのが楽しかった。出てきたことを後悔はしていない。もっと過ごしたいとさえ思う。だから私はこの生き方をもっと良くするために、勇気を振り絞ろう。

 宿につけばなんとなくだが、バアルさんの気配を感じる。きっと彼も感じているだろう。一度深呼吸をして私は宿の中へと踏み込んだ。