▼2023/05/04:この鈍色の世界で
「もう、何も隠さずとも良いのでは」「貴女が言えることぉ?」
『寝てなかったの隠さないと甘えられなかったって私、知ってるんだからね』と肩を竦めた。
目の前の話し相手は深い溜め息を吐き出して、グラスの中で身を溶かし始めている黒氷をストローでつつく様に牛乳へ馴染ませていく。
なんでそんな事を知ってるんだ、と言いたかったが自分と彼女の仲が深いものに変わった事はこのハルファで久々に顔を併せた数名以外の顔は周知の事実なのだから別に気にする程でも無い。
──それよりも、問題は。
「今は私の話ではないんです。
メネさんにいい加減、旧ハガルで起きた話を正直にしろと言ってるんですよ」
セレナが眉間に皺を刻む、それと反対にエリィゼルタ──否、エールメリスは目線を逸らした。
まただ、人の話には首を突っ込みたがる癖に自分の事には踏み入られたくないこの人の悪い癖なのだ。
そして自分たちが『今どういう状況』であるかを受け入れたがらない証拠でもある。
「メネくんは…WこっちWの事とは無関係だもの、それこそ話す必要なんて…」
「関係が無い、だから話さないなんてただのエゴですよ、母上。
……話してもらえない事は寂しい事だって、身に染みてるだろう。貴女は」
この鈍色の世界で
(いつ、こうして言葉を交わせなくなるかも分からないというのに)