彼からの電話 by Nagisa


「……もしもし」

 今は十二時。これはニューヨークの時間。恐らく日本では夜の一時だろう。彼女の声がふと聞きたくなり電話をかける。
 窓辺の椅子に腰掛けて、彼女が出るのを待った。

「もしもし……」

 電話に出た彼女の声色がいつもより悠然としているのは明らかだった。彼女の眠そうな声を聞くのは好き。
 いつも気丈に振る舞っている彼女が私の前では気が緩み私にしか見せない表情がある。これが独占欲なのかもしれない。

「ごめんね。寝るところだったかな?」
「ううん。大丈夫」
「……じゃあ、君が眠るまで切らないでおくよ」

 ありがとうと返事をした彼女は今にも眠りに落ちそうだった。そんな彼女が可愛くて自然と口角が上がる。

「……今日の朝食はパンケーキを食べたんだ。ベリーのソースがかかっていたよ。
 そうそう。久しぶりにこちらの新鮮なフルーツを食べたよ。君にもお土産にドライフルーツをーー」

 先程まで相槌を打っていた彼女が静かになっていた。すると突然彼女の笑っている声が聞こえて、私は疑問に思う。

「あ、ごめんね。聞いてるよ。久しぶりに凪砂くんの声聞いたら安心しちゃった。
 ……早く会いたいなぁ」

 不意を突かれて胸の奥が苦しくなる。
 なんて可愛いんだろう。私の話に耳を傾けて、私の声に安心している彼女がとても愛おしい。

「……私も、早く会いたい」
「ふふ、まだ2日しか経ってないのにね。残りも楽しんでね」

 数日会っていないだけで君のことがこんなにも恋しい。君が今どんな顔で笑っているのか、想像の彼女は輝いている。が、実物には敵わない。

「……ねえ、帰ったら」

 ーー帰ったら、君を抱きしめてたくさんキスをしたい。
 電話口からは既に何も聞こえない。おそらく眠ってしまったみたいだった。規則的に聞こえる彼女の寝息が心地いい。
 私はしばらくの間彼女の寝息に耳をすませながら、君と繋がっている空を見上げて風に当たっていた。

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