彼女の仮装は…?
※少しだけ過激なキスの描写があります
『……今日は早めに帰れると思う。ハロウィンだから、仮装して待ってくれたら嬉しいな』
そう伝えると焦る声が電話口から聞こえた。それでも私の期待に応えようとしてくれるのか『わかった! 頑張る!』と意気込んでいた。無理なお願いだとはわかっていたが、応えてくれようとする彼女がとても愛らしい。
仕事が終わり、車から降りると足早にエレベーターへと向かい、玄関を目指した。
「ふふ、ただいま」
緩む口元を抑えられずに玄関に入ると家の中は閑散としていた。仮装のため何か買いに行ったんだろうか、と考えたが彼女の靴はある。
何かあったのかと思い急いで靴を脱ぎ家に入ると寝室の方からガチャと戸が開く音がした。すると、少しだけ顔を出した彼女がいた。ほっとしているとなぜか出てこようとしないので「どうかしたの?」と聞くと頑なに目を合わせなかった。
「あ、あの、凪砂くんが仮装したら嬉しいって言ってたから、頑張ったんだけど。その……」
歯痒い言葉を連ねる彼女に疑問が浮かぶ。もしかしたら何も用意できなかった、とかだろうか。
すると今度は勢いよく戸を開き彼女の全身が現れた。その装いは意外なものだった。
「な、凪砂くんの仮装! なんて、ね……」
胸の奥が急激に締め付けられる感覚に、一瞬呼吸を忘れる。明らかにサイズの合っていない私の服を彼女が着ている。それをしようとした彼女が愛おしくて胸が苦しくて堪らなかった。
「凪砂くん……?」
微動だにしない私に困惑したのか、不安そうに私の顔を覗いていた。いつも気丈に振る舞う彼女からは想像できないようなことを私のためにしてくれた。その事実が私の心を大いに満たした。私は近づいた彼女の腰に腕を回して力強く引き寄せた。
何度も口づけると息苦しそうにする彼女がなんとも可愛らしい。彼女の瞳を見つめながら瞬きを許さない。彼女の潤いに溢れた瞳の奥にはハートのような形が見えて私に酔いしれているようだった。
それが嬉しくて仕方ない私は彼女を壁まで追い込んで逃げられないようにしたかと思えば彼女の頬を両手で包み込み右手の親指で脆く壊れやすい硝子を扱うように優しく唇に触れた。彼女の妖艶な吐息混じりの声が溢れる。それは私を酷く興奮させる。冷め切らない気持ちを抑えられずに再び口づけを落とした。
彼女が愛おしい気持ちを伝える一心で繰り返していると今度は幾度も角度を変えてキスを落とした。彼女は呼吸を忘れていたようで、ふと我に帰った時には腰が抜けたのか彼女が崩れ落ちてしまった。
「はっはぁ。……なぎさく、激しすぎるよ」
「……ごめんね。君が可愛いことをするから」
「よ、喜んでもらえたなら良かった……?」
腰が砕けた彼女を支えながら起こして強く抱きしめ幸せを噛みしめる。私と同じ香りがする彼女に満たされる気持ちを覚えながら。