楽しい雨宿り
「……すぐ止むみたい」
「そっか。じゃあここでしばらく待ってる?」
「うん」
突然の雨に降られ、一先ず避難しようと近くの閉まっているお店で雨宿りをしていた。
彼が天気予報を確認すると通り雨のようなので、もう少しここで待つことにした。
「不思議」
「……え?」
「人があんなに歩いてるのに、私たち二人だけみたい」
雨が激しく降る中、雨音で騒がしいはずがその雨音のおかげで私たちの周りの音は消されている。不思議な感覚だった。
「ふふ」
「なんで笑うの?」
「……『二人だけ』って言葉、私は好き」
雨の音によってかき消される周りの音は、目を細めて優しく微笑む彼だけを際立たせた。激しい雨音と心臓の音しか私には聞こえない。まさに、二人だけの世界だ。
彼は何か言っているのだろうか。聞く余裕がなくて彼の口元が動いている様を、彼が頬を染めながら楽しそうに話している様を、ただただ見ることしかできなかった。
「――てる? ……ねえ、聞いてる?」
私の顔を覗き込むように彼が近づくと、ボーッと見つめているだけの私はハッと我に返った。
「ご、ごめん。何の話だっけ……?」
「何か考え事?」
「いや、違うの。ごめんね」
「私といるから、私の話聞いてほしい」
不機嫌な表情で話す彼が可愛くて、思わず笑みが溢れる。
「ふふ、ごめんね」
「どうして笑っているの?」
私が笑っているのが不思議なようで、首をコテンと傾げる。
「凪砂くんとなら、雨宿りも楽しいね」