キスをしたがる彼
「ねえ。キス、してもいい?」
彼はキスをして良いかと確認してくる。なぜなのか以前聞いたが、「茨が何でも確認してから行動してほしいって言っていて、君にもそうした方が良いって」と言っていた。
確かに確認は必要だとは思うが付き合っているからいいのになとも思う。
「凪砂くん。キスするときは別に確認しなくても良いんだよ?」
茨くんがどうして彼にそういう縛りを課しているのか、何も考えずそう口に出す。
「……そう。君には確認をとらなくて良いの?」
「うん、もちろん」
「わかった。そうするね」
ふふっと嬉しそうに笑う彼に喜んでるなら良かったなんて呑気なことを考えていた私は、こう返答をしたことを後悔することになる。
それから彼は所かまわずキスをするようになった。「どうしてこのタイミングで?」と思う場面が多々あったが、「したかったから」と言われる。このままでは私の心臓が持たない。
確認を取らなくても良いと言ったのは私だが、あまりにも突然なので伝えるべきだと思う。
「凪砂くん」
「……どうしたの?」
「キスのことなんだけど」
「うん」
「する時、事前に言って欲しいの」
「……嫌だったの?」
「ち、ちがうの。ただ、思っていたよりもドキドキして心臓が持ちそうにないから」
何かじっくりと考え込むんでいる様子で。
「……わかった、次からは言うね」
「う、うん。ありがとう……?」
思っていたよりもあっさりと承諾してもらえたので拍子抜けだ。
「じゃあ――」
安堵していると、彼が口を開いた。
「いま、してもいい?」
「え」
予想していなかった言葉に動揺する。言ったからにはしっかりと言わなくてはいけないので、「いいよ」とポツリと答える。
瞼を閉じて彼を待っていると、静かに唇が重なる。
「……どうして、したの?」
「恥じらう君が、可愛くて」
やっぱり彼にはかなわない。