抱きしめてほしい
柔らかいクッションを買った。肌触りも弾力も良い犬のクッションだ。可愛いだけではなく気持ち良いので最近はずっと抱きしめながらソファに座っている。
抱きしめながらリビングでテレビを見ていると隣に座った彼がじっとこちらを、否クッションを見ていた。すると突然名前を呼ばれる。
「ん?」
「……そのクッション、気持ちよさそうだね」
「うん、すごく気持ちいいよ。ずっと抱きしめていたいくらい」
大きくて柔らかいクッションにスリスリと頬をつけると彼はムッとする。
「……私のことは、ずっと抱きしめてくれないの?」
「凪砂くんは……硬いもん」
「……そう。私は、硬い」
少し意地悪で言ったつもりなのにあっさりと納得する彼を見て戸惑う。「でも」と言いながら手を伸ばす彼は私の手を取った。
「君はすべすべで柔らかい。触っていて飽きないね」
「や、くすぐったいよ」
「ふふ、構ってくれなかったお仕置き」
「……ごめん。でも凪砂くんには凪砂くんの良さがあるよ」
「? 何かな」
「……例えば」
服の上から胸のあたりを人差し指でツツっと撫でる。
「筋肉。とか」
目を見開いた凪砂くんは驚いたのか体が少し強張る。
「……そう」
「う、うん……」
我ながら大胆なことをしたなと思い反省する。お互い恥ずかしい気持ちになり、気まずい空気が流れてしまう。
「……他の人にしてはダメだよ」
「しないよ! 凪砂くんの筋肉が好きなの」
「そう」
ふふっと笑う顔が近づき私の額にキスを落とすと、優しく抱きしめられる。
「私も、君の肌しか触らない」
耳元でそう言われ、顔に熱が集まるのを感じた。