Story. 00
「霊力が足りない?」
「はい……」
卯ノ花隊長に相談したいことがあると伝えたところ、休暇の時間を割いて隊首室に招いてくれた。隊長は平時とは異なる普段着であった。隊首室でこんな風に対峙してお話しするのは希少だ。それほど私にとっては重大な悩みだった。
剣術があまり得意ではない代わりに鬼道が得意な私は、後方支援や治療を専門とする四番隊が合っている。しかし、最近は自身の霊力の低さに不甲斐なさを感じている。回復のための回動は霊力の高さによって大きく左右するからだ。隊長は私の真剣な表情を見て何かを察したのか優しい瞳で私に語り掛けてくれた。
「貴方は十分に優れた霊力を持っています。現に隊士たちの治療をよく頑張ってくれているではないですか。
それに、この瀞霊廷に必要な力を持っているだけでも誇らしいことなんですよ。自信を持ちなさい」
「そう、ですよね……」
隊長の言っていることはもっともだ。回動は四番隊の隊士のみがうまく扱うことができる特殊な鬼道。今までこの力でどれほど多くの隊士たちを救うことができたか。しかし、その分自分の力不足が浮き彫りになっているのも事実だ。四番隊隊士としてひとを癒すという力があることに誇りを持っているものの、自分より高い霊力を持つ隊士を見るとどうしても劣等感を抱いてしまう。それが同期や後輩なら尚更だ。
このままでは救いたいと思った隊士が手のひらからたくさんこぼれ落ちていくのではないか。そんな不安がじわりと私の中に増していく。そんな私の様子を見かねた隊長は私の左手にそっと触れた。
「……もっと肩の力を抜くべきですよ。貴方の働きには期待しているのですから」
「ありがとうございます、隊長」
触れた手から隊長の優しさが流れ込んでくるようだった。隊長は皆の憧れであり、私もその憧れている一人だ。慕っている隊長から「期待している」と言われるのは大変光栄なこと。それに、私のこの小さな悩みで躓いている間にも治療すべき隊士が刻一刻と増えているだろう。私一人が悩みに打ちひしがれ、休んでいてもいいというわけでは決してない。この力は確実に皆の役に立っているんだ。
隊長からの期待はそれ相応の重さがついてくるかもしれないが、その言葉のおかげで身の引き締まる思いになる。隊長に相談することで心の荷も幾分か軽くなった気がした。やはり忙しい中時間を取ってもらえてよかった。この霊力不足は自分のペースで頑張ろう、そう思えた。
今は目の前の隊士の役に立てることだけ考えなくては。