このページで一区切りつけばいいのに(願望)













お兄ちゃんより一足先に神機兵保管庫へ向かったブラッドの面々は、世界を招く者と対峙します。
ジュリウスがいた場所には何も無く、代わりに天使のような装いのアラガミが現れる。そのアラガミの一部にはジュリウスが癒着していて、倒さなければどうしうようも無い事を悟ったレグルスは、かつてジュリウスだったものに自らの神機を向けることとなる。

「行こう…ロミオとケニーの想いも束ねて……アイツを解放してやろう」
「…ああ。僕らの想いを、ぶつけよう」

という感じで戦闘開始。
物理攻撃が通…通って…る?通ってるよね?みたいな感覚はあるけれど、ほとんどはじかれているも同然。唯一攻撃な通りそうな青い光を帯びている部分は、白く固い装甲が邪魔して届きそうに無い。遠距離攻撃なら尚更弾かれる。
世界を招く者の方も隙は大きい割に攻撃範囲広いし遠くまで攻撃飛ばしてくるしオラクルリザーブしたら吹っ飛ばされるしでまじちょっとジュリウス自重しろという。

ていうか攻撃モーション時にあの赤い輝き見えたり、その後空間を切り刻む黄色い斬撃飛ばしたりとまんまジュリウスのブラッドアーツ、疾風の太刀・鉄まがいの攻撃してくるしで、いちいちジュリウス思い出すのでブラッド的にたまったもんじゃないのね。頭の上にジュリウスいるしね。なんかあの、やめてくださいほんとっていう。

そんなこんなで決定的な一打が与えらえず歯ぎしりしていると、あの爪のような翼で全員吹っ飛ばされて身動きがとれなくなるという非常事態発生。そこに飛び込んでくる赤いビーム攻撃(某シューティング・レイ的なアレ)。
巻き上がった硝煙を突き抜けて突っ込んできたのは巨大な赤い鳥。体当たりで世界を招く者を吹っ飛ばして、旋回して優雅に着地。それがスカーレットだと分かったレグルスは、すべてを悟って顔を歪ませる。ああもう、どうして来たんだ。
とはいえ顔を歪ませたのは一瞬で。溜息を吐いた後にレグルスは呆れ声で文句をぶつける。

「…命令違反だぞ。査問会に呼び出しを食らっても、誰もお前を庇えない」
「安心しろよ。今の俺はフェンリルのゴッドイーターじゃねえから」

不敵に微笑んだお兄ちゃん、満を持して参戦です。
白いクレイドルの制服抜きで、赤いシャツを腕まで捲りあげた状態なので、こじつけだけどフェンリルの人間じゃねえからアピール。

そこから始まるのは“極東にケニー・アディントンあり”と謳われたお兄ちゃんの本領発揮。体力と戦闘力?神機手にする前に全身に魔法かけていましたとも。後で反動酷いだろうけどそんなの関係ねえ!
ウロヴォロスだってピターさんだってハンニバルだってソロで駆逐してきたお兄ちゃんはさすがのフットワークで攻撃を躱し、インパルスエッジ叩き込みショットガンをぶちかます。狙いも的確。

その後ろからサポートしてるのはスカーレット。攻撃形態はサリエルの貫通ビームそのものなので、固い装甲があってもその間を縫ってクリティカルヒット狙えます。お兄ちゃんもスカーレットがアラガミだと分かっているので、攻撃を当てる事は絶対にない。スカーレットも攻撃判定外からビーム打ってるしね。

長い間一緒にコンビ組んできたお兄ちゃんとスカーレットの共闘は、もしかすると、ヒトとアラガミの理想の姿なのかもしれない。
ブラッドも見てばかりはいられないとそこから合間を縫って攻撃を叩き込みます。やっぱりブラッドアーツは強いので。

世界を招く者をひるませたところで、終末捕喰が開始。ドレスアップしたユノの光のアリア。やはり負けるユノの終末捕食。押し切られかけたユノを支えるのはレグルスじゃなくてお兄ちゃん。

すると、ユノの終末捕食が一瞬ブレたようにして消える。「え!?」とみんなが驚く前に、また終末捕食がはじまる。一体なんだったのかとブラッドとお兄ちゃんはたじろぐけど、今それどころじゃないのでとりあえず必死にジュリウス側の終末捕喰から伸びる触手を切って捨てる。
実はその時極東支部のサカキ博士、ヒバリちゃん、フランがものすごく狼狽してるんだけども後述で。

そして世界中から届き出す光のアリア。お兄ちゃんと手を繋いだままのユノに手を伸ばして、レグルスは『喚起』の能力でユノの終末捕喰を発動させます。その時青い光を放ったのはなぜかお兄ちゃんからで、お兄ちゃんもユノもレグルスも「は!?」ってなりつつも思考が追いつく前に視界は白くなっていく。
そして博士曰く「人智の及ばぬ領域」へ。

はっと意識を取り戻した六人が立っていたのは湖に浮かぶ庭園のような場所。そこへ神機を携えたまま歩み寄ってくるジュリウスとの、レグルス視点。








「一緒に…一緒に帰ろうよ、ジュリウス…!」
「ありがとう、ナナ。だが、週末捕食を中断する事はできない。つまり…」
「特異点がこの場に残る必要がある──ですよね?ジュリウス」
「ああ。だから、俺は帰るわけにはいかない」

ナナが手を付いているのは空中なのに、そこから光る波紋が広がって、そこから先へ行く事を阻んでいる。試しに手をかざしてみるけれど、僕もナナと同様だった。もどかしさに思わず舌打ちが零れそうになる。

「それなら、私達も…!」
「いや…お前たちは帰るべきだ。この歌を歌う人達を、これからも守り続けるために」

ジュリウスの言葉に、僕はそっと上を見上げた。拙く、僕ら以外は誰も何もいないのに、ユノではない誰かの歌声が反響している。まるで幼子が楽しそうにじゃれているような、幸福な音色だった。

「これは命令じゃない。これは……俺の願いだ」

ジュリウスがかざした手から放たれる波紋も、僕らと同じだった。彼もまた、こちらに来る事はできないのだと──そう宣告されている気がして。ジュリウスの穏やかな表情は、それを受け入れているような気がして。
唇を噛み締めた。だったら、僕らのこれまでは──あいつの行動は、なんだったって言うんだ。

「俺の戦うべき場所はここで、お前達の持ち場は、この外にある。…それだけの事さ」
「ジュリウス、隊長」
「…副隊長。お前はまだ、こんな俺を隊長と呼んでくれるのか?」
「当たり前です」

思わず強い語調で言ってしまい、はっと口を覆う。
眉を下げて微笑んだジュリウスは何も言わないまま、その場にいた全員を見渡した。

「もし俺を許してくれるなら…俺達はこれからもずっと、共に戦い続けたい。それが、俺の願いなんだ」
「っ、あ…!!」
「ジュリウス…!」


小さな嗚咽と共に、シエルがその場に崩れ落ちた。自らが死ぬかもしれないという状況でさえ、絶対に取り乱す事のなかった翡翠の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。

「──頼む」
「…っ」

ジュリウスの懇願を聞くのは、二回目だった。
最初に聞いたのは、ロミオが死んで、彼との任務でブラッドを託された時だ。ジュリウスは年下ではあったけれど、そんな事を微塵も感じさせない、優秀な人物だった。上司として尊敬していたし、命を預ける仲間としても信頼していた。嫌だと言えるはずがなかった。嫌だというつもりもなかった。寧ろ快諾した。
でも、今は違う。

「(こんな…こんなの、断れるわけがないじゃないか…!!)」

穏やかな微笑みをたたえているジュリウスがいっそ憎らしい。彼はもう、きっとすべてを受け入れているのだろう。たった一人、ここで戦い続ける事になる自分の運命を。
歯を噛み締めて伸ばした僕の手を、誰かの手が遮った。

「ケニーさん?」

ギルの戸惑った声で、僕は顏を上げた。さっきまで、ずっと自分の手を見つめていたケニーが何かを決意したような静かな目で、じっとジュリウスを見ていたのだ。
その目に僕はどうしようもない焦燥感を覚えた。いつかと同じだ。誰にも頼らず、たった一人で戦いに挑む事を決意した時の目と。そしてケニーは無言のまま腕を伸ばした。

「え、」

ケニーの手は阻まれる事はなかった。それどころか、まるで溶けるようにして光の波紋が広がっていく。そこに上半身を突っ込んだケニーは、呆気にとられているジュリウスの手を掴んだ。途端、一瞬だけ光った淡い赤の光。
自分の方にぐいっとジュリウスを引き込んだケニーは、右足を軸にしてターンした。入れ替わるジュリウスとケニーの位置。背中から倒れ込んだジュリウスは、ギルが受け止めた。

「ケニー!?」
「さっきユノの背中を支えた時にさあ、感覚があったんだよ。ユノから何かが流れ込んできたような。今も、だけど」

こいつが何の事を言っているのか理解できない。理解したくない。
手のひらをかざしたケニーの目の前に拳を叩きつける。けど、さっき彼が作った穴はもうない。身を起こしたジュリウスは、呆然とケニーを見上げていた。

「ふざけるな、戻ってこい!!」
「無理だよ。もう俺、体質変わっちまったから」

キン、と軽い音と共にケニーの指先から波紋が広がる。へらりとした笑みを浮かべたケニーは指先を戻して、ゆっくりと胸元を握り締めた。

「今なら父さんの気持ちが分かるなあ。こんな気持ちだったのか」

ギルの手を借りて立ち上がったジュリウスと向き合ったケニーは、殊更穏やかに微笑んだ。ぱちんと、指を鳴らして。

「ずっと一人にしてて、ごめんな」
「…あなた、は」
「俺の願いはさ、お前に一秒でも長く生きて欲しい事なんだ」

一瞬だった。俺がついたままだった手のひらに素早く手を伸ばしたケニー手のひらが再び淡く光り出す。くるりと踵を返しぴんと上へと指先を伸ばしたケニーが「アクシオ、」と唱える。どこからともなく現れたのは、彼の神機だった。

「…ふざけるな。そんなの願いじゃない、押し付けだ。わがままだ」
「はは、やっぱりそう思う?」

いくら愚痴を零したところで、どうにもできない事は分かっていた。だってこれは、「人智の及ばない現象」なのだから。

「終末捕喰なんてなくても、命は巡る。きっと会えるよ、俺達なら」

そう言って振り返り、微笑んだケニーのずっと向こうに、暗い影が見える。それらはやがて形となり、見覚えのある荒ぶる神々の形を創り出した。今にも飛びかかってきそうな奴らは、俺達と同じように何かに阻まれているらしい。

「…たぶん、そろそろ時間だ」

そう呟いて表情を引き締めたケニーを止められない事は、もう全員が悟っていた。涙を拭いたシエルを支えて、ナナも立ち上がる。
僕らを全員見渡したケニーは、いつものようにへらりと笑った。

「行け。──ジュリウスの言う通り、お前らにはお前らの持ち場があるんだから」







そして発動した、二つの終末捕食。それらが反発し、作り出される螺旋の樹。世界は一時的な平穏を手にする。
けど、消化できない疑問は数多くあって。

「彼はきっと、そう──ブラッドしか持ち得ない「血の力」のようなものを会得してしまっていたんだ」

それを理解している唯一の人は、やはりかの科学者であったりする。




「ケニー君は、ゴッドイーターになった時から高い潜在能力を持っていたんだ」
「具体的には感応現象を起こしやすい体質を持ち得ているのだと分かるまで、そう時間はかからなかったよ。新型神機使いが第二世代と呼ばれるようになって久しいけれど、彼ほど感応現象を引き起こした例はない」

支部長室を歩き回りながら説明をする彼は、そうする事で自らの中にある知識を整理しているようであった。

「でもケニー君のそれはあくまで感応現象に過ぎなかった。それが血の力…言わば『同調』として覚醒したのは、やはり君の『喚起」の能力のお陰だろうね」
「結果として彼は、形を変えた感応現象を通じて、ユノ君が持っていた特異点の資質を自らに移してしまったんだ」
「彼もまた黒蛛病にかかっていたからね、特異点にならない可能性はそもそもゼロじゃない」

ぴたりと歩みを止めたサカキ博士は、その場にいた全員を見渡した。

「君たちはあまりに近すぎる場所にいたから気付かなかっただろうけど、最後に終末捕喰が発動したのは、ユノ君からではなくケニー君からだった」
「え!?」
「ケニー君から終末補食喰の偏食場パルスは出ているのにユノ君からは一切それが感じられない。実に不思議だったよ」

驚いてものも言えなくなった僕らを前に、サカキ博士は更に説明を続けた。まだ話は終わらないらしい。

「そして、ユノ君と『同調』した彼は…既に特異点として完成されていたジュリウス君とも『同調』し、ジュリウス君の中にあった特異点としての資質を自らの中に移した。彼は人の身でありながら、その中に二つの特異点を持ち得る事となったんだよ」
「だから君は帰って来られたんだろうね。その身を侵していた黒蛛病は、きれいさっぱり彼が持って行ってしまったのだから」

自然と、サカキ博士が見た方向に全員の目が集まる。
固く拳を握りしめたまま、閉じていたアッシュグレーの瞳を開いたかつてのブラッド隊長は、重苦しい声で呟いた。

「…彼は。俺の兄は、この事を知っていたのでしょうか」
「さあ…今となっては、誰にも分からないだろうね」




そして。
今日も僕らは、あいつが作った未来を生きている。

ブラッドの面々は相変わらずだ。
シエルはブラッドバレットの開発に余念がない。ナナは今度はホールドトラップをいじり始めたようだ。ギルは最近、リッカとシロガネ装備に必要な新しい感応派受容を作った。

極東支部の面々は、悲しい顔をいつまでも引きずらなかった。「会いたくなったらいつでも会える」「その頻度は、むしろ以前より多くなったかもしれない」と笑っている。その笑顔に、救われた事もあった。

コウタ隊長、アリサさんも、あいつと一緒に帰ってこなかった僕らを攻めたりしなかった。少し苦しかったけれど、「あいつらしい選択だ」という一言に、苦しみはやわらいだ。
リッカさんが一粒だけ溢した涙は、あいつが残していったクレイドルの制服に染み込んだけれど。

ジュリウスはほんの少し塞ぎこんだりしていたけれど、今はそれを微塵も感じさせない。クーデターの首謀者としての容疑も晴れた。
今は日々舞い込む感応種の討伐任務に身を置いている。けど決して生き急いでいるというわけでもなく。曰く「俺は、彼の願いを果たしているだけさ」らしい。

「まあ、そんなところだ」

さらさらと前髪が流れる。広い草原に突き立てたあいつの神機に手を置いた。オラクル細胞が抜かれた神機は、触れても補喰される事はない。
見上げると──あの日、世界中を包んだきらきらとした青い光が、螺旋の樹を包み込んでいた。





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