前回の続きから。
切り替わってめも書き。
都合によりお兄ちゃん視点。








「ケイネス・ヴィスコンティ──そういえば、ジュリウスにはお兄さんがいらしたわね」
「あの時乗り越えたはずの試練が、どうして今目の前に立ちはだかっているのかしら」

ラケルとの会話からジュリウスを手に入れるためにラケルが自分と両親を手に掛けた、というかむしろアラガミをけしかけたと知ったお兄ちゃんは激昂。お兄ちゃんvs零號神機兵発生。
頭に血がのぼるやらアドレナリンやらで黒蛛病の痛みはシャットアウトされる。魔法を大盤振る舞いでぶつけて、一旦優勢になるけどやっぱり神機無いので決定打は与えられない。結合崩壊程度。零號神機兵も、機械というよりもはやアラガミなので、それも完全に破壊できない原因かな。
長期戦になるとやっぱり病人なので体力が尽きる。巨体にぶん殴られて耐えられる体力はありません。オーバーヒートしてぶっ倒れてミッション失敗。オワタ。
零號神機兵に押さえられた お兄ちゃんの前に、ラケルが進み出る。

「貴方は極東支部初の、第二世代の神機使いだそうですね。高い潜在能力も有しているとか」
「貴方のその力は…それもまた、おそらく意思の力。第二世代の神機使いでも、血の力に目覚める事は分かっています」
「ジュリウスと血を分けた兄弟である貴方もまた、特別な存在なのかしら?」

ラケルの不穏な発言に思わずどん引いていると、がつんとぶん殴られて意識フェードアウト。
意識を取り戻すのはすぐ。目覚めると頭はぐらぐらするし重いし視界暗いしで何事、ってなる。
寝かせられているので顔を上げたら、腕に繋がれた管からどくどく血は抜かれてるし、ラケルは傍で微笑みながら作業してるしそこになんか医療器材並んでるわで本能的にぞわり。何されてたの俺、的な。

そのうちに意識がどんどんフェードアウトしてきたあっこれ病気の進行待たずに死亡フラグ立ってね、ていうか目の前が薄らいできてこれ死ぬ、死って時に斜め向かいから突っ込んできた赤い影。我らがスカーレットさん優雅に参上。かっこよすぎ死ぬ。
物理攻撃が効かないというスタイルを生かし、ビームだけ巧みに避けながらぶっ倒れてるお兄ちゃん回収。さすがスカーレットそこに痺れる憧れる。

お兄ちゃん失血量的にちょっと危なくなるけどそこはセーフで。ただし生命力が極端に弱まったためか、黒蛛病が一気に進行。今までは腕一ヶ所だった蜘蛛のあざが体中に浮き出はじめる。
こんなんなので、今のところお兄ちゃんに物理的に接触できるのがアラガミであるスカーレットだけになるという…いろんな意味で涙目。

一方、なぜラケルがお兄ちゃんの血を欲しがったかというと。
ラケルの目からしてもブラッドの血の力とお兄ちゃんが使っていた力の本質が異なるのは理解できる。でもラケルは、魔力がお兄ちゃんの血に宿った力だと勘違い。なのでお兄ちゃんの持つ新型のP53偏食因子+謎の力+黒蛛病の偏食因子の入ってるらしい生き血を収集。それをジュリウスに飲ませ(取り込ませ)ます。もちろんジュリウスに対し、それが血だとは言わないし、血だと分からないように対策はとってます。
ジュリウスの体質なら他人の偏食因子も受け入れられるだろ、的な。安直。しかし奇跡すぎる体質で彼は無事である。

ユノが黒蛛病に罹ってしまった事に責任を感じるお兄ちゃん。ユノはそれを「私のお願いを聞いていただいただけですから」と笑うしレグルスも「それこそ、僕の監督不届きだ」と言うものだからやりきれない思いを抱える。
なんか結局お荷物にしかなってなくね…役に立ってなくね…と落ち込むお兄ちゃん。

入院の為病室にいる間、お兄ちゃんの感覚的にそれこそちょっと目を離した隙にジュリウスがクーデターを引き起こしている重罪人になっている事に呆然。

「…なんでこうなっちまったのかなあ」
「ジュリウスが悪いんじゃねえんだよ。あいつは、人々を教え導きたいって…ただそれだけ願ってるはずだろ?」

幼いころから人を疑うという事を知らなかったジュリウスは、なんでもかんでもすぐに信じた。だからジュリウスは、自分がこの世界では異端とされてもおかしくない力を持っていたも、すぐに受け入れてくれた。
そんなくそ真面目な性格だった弟は何一つ変わってなかった。嬉しいけど、そのせいでジュリウスは容疑者として全世界に報道されている。それがどうしようもなくつらくて悲しい。

「俺はもう一度、フライアに行きたい。そんで、ジュリウスを連れ戻したい」

正直いつ死ぬかなんて分からない状態でそんな事言うのおこがましいって分かってるけど、ついぽろりと吐露してしまうお兄ちゃん。そしたらナナが間違ってる友達は止めないといけないから、って言って、もう一度フライアに行く事になる。
以下、アーク計画について聞かされるレグルス視点。

「あいつさあ、その時言ってたんだよ。“より大きな善のために”っての、昔から嫌いだって」
「…そう、ですか」

変わらないな。と思わず零したレグルスをじっと見たコウタは、前々から思っていた疑問を口にする。

「あのさ。お前とケニーって、いつから友達なわけ?」

レグルスとケニーが神機使いとしてやってきた時期も、二人の出身地も異なる。二人にはまるで接点が無い。なのに、ケニーとレグルスはまるでずっと前から友達であったように接する。二人を知る人間なら誰もが聞いてもおかしくない質問だけど、レグルスは質問の内容がおかしくて、ちょっとだけ吹き出してしまう。

「僕とあいつは、友達とは少し違いますね」
「え?そうなの?」
「なんと言えばいいのか…友達よりはもう少し殺伐としているというか──そうですね。ただのくされ縁です」

ケニーが以前と少しも変わっていないのは、レグルスもなんとなく感じていた。特に、実の弟が関わっているとなればなりふり構わずに暴走するところとか。だって彼は、自分の知るケニーという男は、家族の為なら自らの命を簡単に投げ打ってしまうような男だから。
また、あの時のような事があるかもしれない。ほんの少し焦燥感に襲われて、レグルスは少し身を引き締める。

サカキ支部長による特異点と月の緑化との関係を聞いて、この間コウタが言っていた話を思い出す。ああなるほど、的な。
この時に黒蛛病と赤い雨、特異点との関わりの中にユノだけではなくお兄ちゃんまでやり玉にあがる。自分で体力を削ったり、負傷したりとか、ユノとはまたこと違ってせいではあるけれど、結果から見れば彼もまた急速に黒蛛病が進行した人間だから。

「ケニー君の研究データと照らし合わせた結果、病気の進行がある程度進んでから亡くなった患者は、そうでない患者と比べて特異点に近い偏食因子が多く検出されていたんだ」
「…それは、つまり。特異点化が進めば進むほど」
「死に近付いていると言ってもいいだろうね」

特異点となり地球を初期化してしまうのが先か。死に追い付かれるのが先か。どういう形で死ぬのがいいかと言われているも同然である。
とはいえ、致死率100%黒蛛病の末期状態であるというのに、ユノもお兄ちゃんもいつも通り。
レグルスとしては、死ぬ前までには衰弱してしまうという目に見える症状が現れるけど、二人がどうしてそんなに普通にしていられるのか分からない。
眠りに落ちたら、そのまま永遠に目が覚めないかもしれないのに。

ジュリウスが特異点として完成された時に昔の夢をみていたので、その時にお兄ちゃんの事もぼんやり思い出してくれてたら私が個人的に嬉しいので、以下勝手に思い出捏造のジュリウス視点。





まだ家族が生きていた頃、俺はまだ何も知らない子供だった。
俺にとって、父は強く正義の象徴だった。母は優しく、深い愛を注いでくれた。そして、たった一人の兄は、俺にとって最も身近な存在だった。
兄と俺は、二つしか年が離れていなかった。彼と俺は、いつも一緒にいた。

「こらジュリウス。またリボンが歪んでるぞ」

そう叱りつつも、兄の口元はいつだって緩んでいた気がする。
父よりは小さくとも俺よりは大きな手が、いつもリボンを結び直してくれていた。俺はいつしか、リボンを結び直してもらうためにわざと歪んだ結び方をしていたように思う。

「ジュリウスの髪はきれいだな。母さんみたいだ」

母から受け継いだ兄とおそろいの金髪が好きで、元々長く伸ばしてはいた。兄がそう褒めてくれるから、俺は母にねだって髪の手入れを怠らないようになった。
いつだったか、副隊長に「隊長の髪はとても綺麗ですね」と褒められた時。恥ずかしさと嬉しさ──そして、誇らしさが俺の旨を占めていた気がする。

「ほら、見てみなジュリウス。俺達は瞳の色もおそろいなんだ」

父から受け継いだ兄とおそろいのアッシュグレーの瞳も、好きだった。マグノリア=コンパスに来たばかりの頃は、鏡を見る度にそう言ってくれた兄の事を思い出していた。父や母の事も。

家族との思い出はいつだって俺の心を温めてくれたけれど、同時に寂寥感が俺の心を苦しめた。だから俺は、いつからだか家族の事を思い出すのをやめた。
今になってそれを、とても後悔している。もう、顏さえ思い出せないから。






以上(真顔)
ジュリウスのシーンはゲームの回想シーンでかかってる零號神機兵のフルート仕様のあれをかけながらお楽しみください。サントラまだかな……。

そして、終末の晩餐に向かうレグルス率いるブラッドの面々。お兄ちゃんはさすがにお留守番です。今の彼はガチ非戦闘員なので。

フライアに乗り込んでラケルの話を聞くレグルス。彼女の中に本当にアラガミがいるとするならばその時点で、話し合いなど到底不可能だと悟る。人であっても、対極の位置にいる者同士歩み寄る事なんてそうできない事をレグルスは知っている。
シマウマがライオンに、自分たちを食べるなと言っているようなものだ。ラケルの意思を曲げるという事は、彼女に「生きるな」と言っているようなものだから。

姉妹のちょっとした諍いから始まったこの負の連鎖は、連鎖に関わる誰もが少しずつ悪かったのかもしれない。でも、その中の誰かを捕まえて「お前が悪いんだ」と糾弾する事はできない。
だからといってラケルに自らを差し出すのはお断り。レグルスもレグルスで、これまで犠牲を積み重ねてきた身だから。

というわけで、ブラッド全員で零號神機兵をボコボコにして勝利。でも特異点として完成してしまったジュリウスの終末捕喰が始まってしまう。大筋通り、とりあえず極東支部に撤退。

サカキ博士と一緒にブラッドの帰りを待っていたお兄ちゃんは話を聞いて呆然。且つ、サカキ博士から「ジュリウス君を助ける事はほぼ不可能だろう」と断言に近い推測されるからもうたまったもんじゃない。

「一つだけ言っておく。私は、小を殺し大を生かすというロジックを認めない。どんな絶望の中にも、そこに必ず道はあり…希望の仲だけに、奇蹟は姿を現す」

フェンリルきっての科学者がロマンチストと揶揄される所以がこれである。だから好きだ博士。

「──これは、私の友人たちが身を以て示してくれた事だがね」

ケニーを見て笑う博士に、ブラッドの面々はアーク計画を阻止したのって第一部隊の面々だっけ…と思い出す。
サカキ博士はブラッドとユノのみ話し合うように言う。そういうわけでのけ者にされたお兄ちゃんはすこしむくれながら博士を睨む。俺だってジュリウスの事助けたいんですけどー、みたいな。

「止めたって無駄だからさ」
「…いやにきっぱり断言しますね?今の俺、オウガテイルにだってやられる自信ありますよ」
「君は底抜けのお人好しだからね。たとえ目の前にどのような困難が立ちはだかろうと、君はジュリウス君を助けに行くと断言するよ」
「お人好しって、」
「だからこそ君はあの時、ロミオ君とジュリウス君を助けに向かったんだろう?」

弟想いなんだねぇと笑われて久々に頬に血色が戻るお兄ちゃん。体育座りで「うるせーっすよ…」とかのたまう。

話し合いが終わった後、ブラッドとユノ、サカキ博士を交えての作戦会議に、一応お兄ちゃんも在籍します。ただし作戦の頭数には入れられません。

「さっき、止めても無駄って言ってたじゃないすか!」
「君の意思は曲げられないだろう、というだけさ。極東支部の支部長として、今の君を出撃させるわけにはいかない」
「こないだは行かせたくせに!」
「あの時は今ほど病が進行していなかったからね」

サカキ博士に強く肩を押されてソファに腰を落とさざるを得ないお兄ちゃんは下から博士を睨むけど、笑みをひっこめた博士は手のひらを見つめて握り拳を作るのです。

「以前の君なら、私に押された程度で力負けなどしないだろう」
「…っ、博士!」
「残りなさい。命令だよ」

命令とまで言われては唇を噛みしめるしかない。レグルス達に託すしかないのがもどかしくて情けなくて、でも何も言い訳できなくて。
ブラッド達をフライアに送り出した後もぶすくれているお兄ちゃんに対し、博士はふっと笑みを向ける。

「さて、私はラウンジに行ってこようかな」
「………」
「大人しくしているんだよ。ああ、今は忙しくて君への見張りなんて割く人員なんていないし、誰も君の傍についていられないけど」
「!はか、」

シュッと音をたてて閉まった扉をしばし呆然と見つつ、お兄ちゃんは一度部屋に戻って身支度を整える。
スカーレットを肩に乗せて神機保管庫に向かうと、そこには何故かリッカちゃんが待っているわけで。
神機は全て収納されているのに、なぜか一つだけ残っているお兄ちゃんの神機。

「──来るって思ってたよ」
「リッカ、ちゃん」
「だって君は…一度だって、上司の命令を守った事がないもんね?」

泣きそうな顔で差し出される神機を受けとる。今にも涙を溢しそうなリッカちゃんに、お兄ちゃんは着ていたクレイドルの上着を差し出す。

「預けとく」
「!」
「あとで取りに来るから、持っててくれないかな」

ちなみにお兄ちゃんとリッカちゃんの間に恋愛フラグはたってません。リッカちゃんが天使なだけです。
返事を待たずに走り出したお兄ちゃんの背中にリッカちゃんの涙声が突き刺さります。

「絶対、だよ!絶対、帰ってきてねー!!」

巨大化したスカーレットに乗ってお兄ちゃんはフライアに急ぎます。今度こそ間に合うように。今度こそ、失わないように。





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