眼差しにシャットアウトして





「……なにしてるんすか」
「え? ……あれ、シャークんさん」

イルリガードル台をカラカラと引きずっている私に声をかけたのは患者の一人────嬉しいことに他の患者と比べるとワイテル病が進行していない患者────シャークんだった。赤色のヘッドホンと患者服の下から着ている黒パーカーが特徴的な人だ。

「……先生も、病気?」


シャークんの視線は私の横にある無表情で暖かみもない点滴棒を射抜いている。白衣の下に隠された左手首からは、点滴のチューブが伸びている。チューブを辿ると、速度調節をするクレンメ、点滴筒を経て、輸液バッグに辿り着く。輸液バッグは、サイダーとはまた別の──人の暖かみがそこに宿っていると錯覚しそうな生々しい水色の液体で満たされている。甘ったるいシロップの──でも爽やかなサイダーの匂いが全身にへばりついているようで、少しばかり気持ち悪い。彼もそうなのだろうか。シャークんは眉間を寄せている。


「その匂い、なんか……」
「あー、うん。ごめんね。甘い匂いは苦手だったかな。Nakamuが私のために作ってくれた薬液なんだけどね……なんか、甘いよね」



それは私も認めよう。Nakamuの作る薬品は基本的に甘い。彼を包み込む匂いが砂糖を溶かしたみたいなものなのも、恐らく薬品の匂いが染み込んでいるから。私が奇病治療のために服用している薬品もすべからず甘い。以前はきりやんが調合してくれた無味無臭の薬を飲んでいたから尚更。









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