(2 / 293) ラビットガール (02)

―――ふ、と目を覚ますとそこは森が広がっていた。


「ここ…どこ…」


女の子は倒れていた。
倒れていた体をゆっくりと起こし、女の子は周りを見渡す。
そこは森の中だった。
目を覚ます前の記憶を思い出そうとするが、女の子の記憶はぽっかり穴が開いたようになかった。
どうしてここにいて、どうして倒れていて、どうして一人ぼっちになっているのかが分からず、家族や親しい人の顔さえも思い出せない。
首を傾げていると、カサリと音がしたためその音の方へ目をやる。
そこにはウサギらしき白くフワフワでポンポンとした愛らしいしっぽが草に隠れるところだった。
野生らしいウサギが草むらに隠れたのを見て女の子はどこか懐かしさと、悲しさを感じた。
しかし当然記憶のない彼女がどうしてそんな感情が出てくるのかが分からず、そして理解しようにも彼女はあまりにも幼すぎた。


「君、どうしてこんな森の中を1人でいるのかな?」

「…?」


ウサギが消えた草むらを見つめていると、男性の声が聞こえた。
そちらへ振り返ると、狩りの途中なのか銃を肩にかけている男がいた。
狩りで森に入れば、女の子がポツンと座っているのを疑問に思い話しかけたらしい。
女の子は知らない人に話しかけられ、幼さゆえか首を傾げてしまう。
よく分かっていない女の子に男は驚いた表情を浮かべていたが、ふと優しげな笑みを浮かべ女の子に手を差し伸べる。


「大丈夫かい?こんなところにいては獣や山賊に襲われてしまう…私が町まで連れて行ってあげよう」


そう言う男の差し出された手を女の子は取るでもなくただ見ていた。
手を取る素振りを見せない女の子にしびれを切らしたのか、男は自ら女の子の小さな手を取って抱き上げる。
女の子は不思議そうな顔をした後困ったように眉を下げた。


「降ろして…」

「大丈夫、町に行けばお巡りさんがいるかね…お巡りさんにパパとママを探してもらおうね。」

「…パパ…ママ……」

「そうだよ、パパとママだ」

「……お兄ちゃん…」

「お兄ちゃんもいるのかい?じゃあ、町に降りればお兄ちゃんにまた会えるよ」


男に抱き上げられた女の子は困ったように降ろしてもらうよう言ったが、男はにっこりと笑みを浮かべるだけだった。
父と母という言葉に女の子は抵抗をやめ、男は笑みを深めた。
女の子は少しの間考えるような素振りを見せた後、一瞬だけ一人の青年が脳裏によぎり、ぽつりと呟く。
その青年はぼんやりとしており、顔もハッキリと見えず、更には記憶もあいまいなため、その青年が兄なのかも分からなかった。
男は両親だけではなく兄もいるのかと聞くも女の子からは『…分からない…』とだけ返ってくる。
そんな女の子に怪訝とさせながらも抵抗をやめた女の子を抱きながら男は森を降りる。
女の子はそのまま街へと降り―――…

売られてしまった。

男は女の子を売った金で飲み仲間全員に奢ったという。

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