(205 / 293) ラビットガール (205)

「グルル…」


何とか階段を登り、森にある木に隠れケルベロスから身を隠す。
ケルベロスは傍に居る4人にはまったく気付かず姿を消す。


「犬のクセに鼻は利かねェのか…行ったぞ………」

「どうしよう…だいぶ森へ入り込んじゃった…」

「あんなのが歩き回ってるなら目立つ場所で助けを待つのも大変だぞ…!」

「まったくでしね」


4人以外の声にナミ達はゆっくりと振り返るとそこには逆さにぶら下がっているようにたたずむ男がいた。
アスカ以外がそのぶら下がっている男に驚き悲鳴を上げる。


「「「ギャーーーーーー!!!!誰だ!!!?」」」

「私は…ヒルドンと申しまし。野犬に追われていらしたのでお困りなのではと背後から忍びよりました…ここらの森はこれから夜が深けて参りましとこの世のものとは思えぬ程に危険な森へと変化致しまし…もしよろしければ……私の馬車でお屋敷へいらっしゃいまし…ドクトル・ホグバック様のお屋敷へ…」

「え…!ホグバッック!!?」


ヒルドンの言った名前にチョッパーが反応する。
4人はお言葉に甘えて、とヒルドンの馬車へと乗り込んだ。
アスカは席の空きがないからとヒルドンの隣でチョッパーを抱いて座る。


「ねェ…この馬車を引いている馬…霧でよく見えなかったけど…少し…変わってなかった?」

「気のせいでございまし…ヒヒヒヒ」

「そ…それならいいんだけど………」


馬車は立派なのだが、ナミは乗り込むときチラリと見た馬が少し気味悪く感じたらしい。
しかし気のせいと言われ渋々納得するもやはり薄気味悪いのは変わらず腕を擦る。


「はい」

「え…?」

「ウサギでも抱いてたら恐さ薄れるんじゃない?この子大きさの割りに軽くしといたから腕が疲れるって事ないと思うよ?」

「ありがとう、アスカ…」


恐がっているナミにアスカは抱くのに丁度いいサイズのウサギをナミに渡す。
ナミはウサギを抱きしめるとその暖かさと鼓動から、恐怖が少し和らいだ気がした。


「お仲間達を待つのなら屋敷が一番でし。目立ちましし、安全でし…」

「それに!ドクトル・ホグバックにも会えるしな!!」

「そんなに有名なのか?」


ウソップの問いにチョッパーは目を輝かせてホグバックがどんなに凄いのかを語る。



「医者でその名を知らない奴はいないよ!!"天才外科医"なんだぞ!!奇跡の様な手術で星の数程の人達の命を救ってきたんだ!!地位も名誉も医者として得られる全てを手に入れて…世界中の医師達からの尊敬を集めてた…!!だけどある日突然姿を消したんだ」

「…………」

「失踪事件とも…誘拐事件とも言われて医学界は一時大変な騒ぎになったけど…結局何の手がかりも掴めないまま今はもう"ホグバック"という名前は伝説になりかけてるよ………そのドクトル・ホグバックだろ?」

「さいでし。ドクトルはこの島で今もなお人智を超えた研究をなさっておいででし」

「サイン頼んでもいいのかなー!!!」

「それくらいは大丈夫だと思いましでし」


チョッパーの話を聞きながらナミはカーテンを開けて、外を見るとライオンが立っていた。
そのライオンはゆっくりと振り返り、ライオンの顔を見たナミは悲鳴を上げる。


「ギャアーーーーーー!!!…って何だよ!!驚かすんじゃねェよ!どうした!?」

「だ…!だって今外に…ラ、ライ…オン…こ…こんなの…!!」


ナミがスケッチして見せたのは人面ライオンの絵。


「人面ライオン?」

「そんなのいてたまるか!!!」

「だったら自分で外見なさいよ!ほら!!」


ばッ、とナミは馬車のカーテンを開けるとそこには視界一杯に現れた変な生き物達が『エモノダ♪エモノダ♪』と踊っていた。
しかし変な生き物達は4人に気付き、アスカ以外の3人は目を擦り再び目を開けてみると外は普通の森だった。
3人はホッとため息をつく。


「気のせいよね…絶対…」

「あぁ!あ、あんな恐ろしいのがこの世にいるなんて考えられないからな!!!」

「気のせいなのか!?よか…」

「なんかいたね。何だろ…人面木?人面猫?人面だらけだったけど…」

「いや〜〜〜!!!言わないで〜〜!!!」

「気付かなかったことにしたかったのに!アスカのアホーーーーー!!!」

「やっぱり居たんだ!!こえーーーー!!!」


気付かないフリして自分を誤魔化していたが、アスカが本当の事を言ってしまったものだから誤魔化しきれず三人は悲鳴をあげる。


「ちょっと止めて!!馬車止めてヒルドンさん!!」

「どうなさいました?そんなに慌てて…幻覚でも見えましたか??」

「ありゃ幻覚じゃねェ!確かになんかいたんだ!!この森やっぱおかしすぎるぞ!!」

「そうでしね、少し変わっていまし。そしてこの深い霧と恐怖心から幻覚を見てしまう方もちらほら…」

「ヒルドンさん悪いけど!!引き返して海岸まで送ってくれないかしら?危険でも私達その後は何とかするから!!」

「えーーっ!!そしたらドクトル・ホグバックに会えないじゃねェかー!会いたいじゃねェかーーーっ!!」


憧れの人はこの先にいるのに引き返せというナミにチョッパーは涙を大量に流し泣き出す。
アスカは泣き出すチョッパーの頭を撫でて慰めようとするも中々泣き止まず、結局ホグバックとは会わず引き返す事になった。


「…ごめんね、チョッパー…せっかくのチャンスを…」

「しょうがねェよ…こんな時ルフィみたいに一人で行動できないおれが未熟なんだ…」

「一緒に行ってあげようか?」

「本当か!?」

「ダメよ!!あの変な生き物見たでしょ!?バラバラになったら危険よ!!」


アスカが一緒に行こうかと提案するも過保護のナミに断られ、結局使用人に引き返す事を伝えに馬車から降りたヒルドンを待つことになった。
しかし、ヒルドンを待って10分…


「変だな…逆戻りするだけ………えーーーーっ??誰もいねェぞーーーっ!!馬までいねェ!!墓地の真ん中に置き去りにされてる!!」


中々戻ってこないヒルドンと、動かない馬車に首を傾げながらウソップが窓から顔を出すとそこには馬もヒルドンも居なく、ポツンと墓地の真ん中に置き去りにされていた。


「何ですって!?…何で!?」

「え〜!?置き去り〜〜っ!!?しょ…小便しにいったんじゃねェのか!!?」

「ヒルドン!おーい!!どこ行ったんだ!!?」


どんなに叫んでもヒルドンからの返事もなく、途方にくれていると墓地から何かが土から這い上がってくる音が聞こえ、ナミ達は恐々に辺りを窓から見渡す。


「……え!?…え〜〜〜〜!!!?」

「アアアアアアア!!!!!」

「ウソでしょ…!!?」

「うわ…」

「「「ゾンビだ〜〜〜〜〜っ!!!」」」


辺りは既に墓から這い上がってきたゾンビに囲まれていた。
馬車に群がるゾンビにナミ達は怯え、ゾンビの手は伸ばされウソップの肩を尋常ではない力で掴む。


「ギャーーーーーッ!!痛ででで!!!」

「ウソップ!!」


アスカがウソップを掴むゾンビを蹴り飛ばしたのと同時に馬車が倒されてしまう。
その拍子にナミ達は外へ投げ飛ばされゾンビたちに襲われてしまう。


「よっ…!」

「うおっ!!」

「あっ!」

「ギャアアアアア!!!!」


アスカが素早く体勢を整え3人を抱えゾンビ達と間合いを取る。


「あ、ありがとう…!アスカ!」

「ここまで来たら屋敷に逃げ込んだ方が近いよね」

「ああ!そうしよう!!大丈夫だ!ゾンビってのはノロノロ呻きながら歩く事しかできねェんだ!!」


アスカは3人を抱え屋敷へ逃げ込もうと走りだすが…


「「「待てクラーーー!!!!」」」

「速っ!!!」


ゾンビ達が全速力で追いかけてくる。
これにはさすがのアスカもびっくりしたのか必死にウサギ足で逃げる。


「走れるとか反則!」

「ウゥオオォ――」

「「「うわああああああ!!アスカ!!もっと早くーーー!!」」」

「分かってる!!でもゾンビってこんなに速いもんだっけ!!?」


必死に走り、ゾンビ達も追うのだが…


「ゼー…ゼー…ちょっとタンマ…!!」

「体力なっ!!!」

「でも今のうち!!」


走るのに体力がないせいか、すぐ息を上げて休憩してしまうゾンビ達。
そんなゾンビ達にアスカは3人(1人は大男風)を抱えさっさと薄暗い空間に聳え立つ屋敷の入り口前へ向かっ全速力で走った。

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