無事インペルダウンから脱出し、ボン・クレーのお陰で政府専用航海、"タライ海流"に入ったルフィ達はボン・クレーの犠牲に涙していた。
そんな涙するルフィ達をよそにイワンコフはドアから顔を覗き込む。
「イナズマはここでリタイアさせましょう」
「え…そんなに毒が進行してるって事ですかい!?」
「ヴァターシも自分の受けた一種類の毒は『治癒ホルモン』と『テンションホルモン』で吹き飛ばしたけれど片や寿命を縮め片や
後に激しい後遺症を伴う力技…できる事なら時間をかけて真っ当に回復するに越した事はないんだよ!一度削れた寿命は絶対に戻らナブル!イナズマは『革命軍』に必要なニューカマー!今はまだ体を酷使する時じゃナショナブル!!」
「ねェ」
「ん?」
顔がでかすぎて入らないイワンコフにアスカが声をかけ、イワンコフが振り返ると2羽のウサギの耳を持っているアスカが立っていた。
「あらバニーガール…何ダッチャブル?そんなウサギなんか持って…」
「これ、イナズマの上に乗せたら毒を吸い取ってくれるから…」
「おいおい、姉ちゃん!いくらんなんでもそれは無理じゃないか?」
「このウサギは?」
「私の技の"ラビットセラピー"の一部…本当は私が"ラビットセラピー"をすれば着く頃には元通りなんだけど…毒の場合私にも影響があるから……ごめんなさい…」
しゅん、とするアスカにイワンコフは笑みを浮かべる。
「何言ってるダッチャブル!十分よ!ありがとう!使わせてもらうわ!」
「!…うん…これ、重くないから負担もかからないよ」
「あら本当!!羽みたい!!」
受け取ってくれたイワンコフにアスカは笑顔を浮かべ、ジンベエのところへ戻っていった。
その後ろ姿をイワンコフが微笑ましそうに見つめる。
「ジンベエ!」
喧嘩しているルフィ達を無視し、アスカは駆け足で舵を取っているジンベエに駆け寄る。
「おお、アスカ君!どうじゃった、受け取ってくれたじゃろ?」
「うん!」
イワンコフがウサギを受け取ってくれるか心配だったがジンベエが後押ししてくれたおかげでなんとかイナズマにウサギを渡せたのだった。
アスカが嬉しそうに笑い、ジンベエもつられるように笑う。
暫く他愛のない話をしていたらそばで巨大な大砲に座って海を見ていたクロコダイルが静かに口を開いた。
「魚と話しができるってのは……あれァ…"人魚族"の特殊能力だと思ってたが…お前がサメを呼べるとはな…」
「魚人が魚と仲良くしてはおかしいか?」
「まァ常識外れではあるな…粗暴な種族の…ハミ出し者ってとこか」
「それは褒め言葉と受け取ろう…魚人が粗暴というのも否定できん……!」
クロコダイルの言葉にジンベエは苦笑いを浮かべ、話が今一分からないアスカは首を傾げる。
すると喧嘩が終了したのか、ルフィが手すりに腕を伸ばして着地する。
「ルフィ君…」
「ん?」
ルフィはジンベエに呼ばれ、アスカの隣に移動しながら首を傾げる。
「お前さんにゃあ今回エースさん救出のチャンスを貰った…!深い恩ができたのう」
「そういうのやめろよ、キリがねェ……!!おれだって心強いんだ!お前ホントに強ェんだな!!」
ニカッと笑うルフィにジンベエは目を細める。
「わしの事はジンベエと呼んでくれ!七武海をやっとったがもう称号剥奪は確実じゃ!!思う存分『海軍本部』で暴れてやろう!!オカマ君の想いにも応え…必ずやエースさんを救出するんじゃ!!」
ジンベエは今更ながらだが、と自己紹介をするもルフィとバギーは声を上げて驚く。
「おいおい!!お前"七武海"だったのかァ〜〜〜!!?じゃあ強ェわけじゃんよ!!」
「知らねェ方が変だ」
「すまん、自己紹介が遅れた」
ルフィとアスカはジンベエが七武海とは知らなかったのかルフィはどてーッと転がり、アスカは目を思いっきり丸くしてジンベエを見ていた。
「おい!『海軍本部』ってのは何だ!!まさかこの船『海軍本部』へ向かってんじゃねェだろうな!?『白ひげ』と『海軍』の戦争の事知らねェわけじゃあるめェお前ら!!!」
「え!?何!?『海軍本部』!!?」
ルフィとは違う言葉に驚いていたバギーとその他の囚人達にクロコダイルは呆れたように見つめる。
「今更何を言ってる…ニブイお前らが悪いんだ」
「何を!?」
「『正義の門』から出た時点で行き先は『海軍本部』か『エニエス・ロビー』の他にない…今船が乗ってるのは政府専用"タライ海流"政府の三大機関を結ぶ巨大な渦だ…もとよりおれ達はその"戦争"に用があって脱獄したんだ」
「きき…聞いてねェぞーーーーーーっ!!!」
「今すぐ船を止めろ貴様ァ〜〜〜〜!!!」
「止まるわけなかろうが」
無茶言うな、と言わんばかりに困るジンベエ。
「お前らが降りろよ」
「降りられるか!!折り紙つきで死ぬわ!!!」
「そんなトコに行くぐらいなら監獄に帰りてェよーーーーーー!!!」
「カマーランド組は知ってたぞ?」
「『海軍本部』『七武海』vs『白ひげ海賊団』の戦争なんて地獄より恐ェよ〜〜!!!」
初めて知った衝撃に囚人達は騒ぎ出す。
なんとか七武海の衝撃から落ち着いたアスカはジンベエの隣に戻る。
「そっかー…ジンベエって七武海なんだ……驚いた…」
「む…騙してたわけではないが……すまん…」
「別に謝る必要ないよ…知らなかったのが悪かったんだし……エース、絶対に救い出そうね!」
「ああ、勿論じゃ!」
いつの間にか仲良くなった2人は笑いあっていると軍艦についている電伝虫が鳴り出した。
「ん?もしもし」
≪こちら『海軍本部』≫
「あ、おれルフィ」
「名乗るな海賊が!!!」
それをルフィが取ってしまい、尚且つ名乗り出てしまって周りの囚人達に突っ込まれていた。
≪この船が脱獄囚共に乗っ取られた事はインペルダウン護衛艦隊より報告を受けている…通信が途絶える前の獄内からの情報とで割り出された今回の大脱獄事件の『主犯』は三名!≫
「三人?」
≪海賊"麦わらのルフィ"、"冷酷ウサギのアスカ"…そして同じく海賊"道化のバギー"!!≫
海軍から上がった名前の中にバギーの名があり、バギー本人も囚人達も驚いていた。
「な… ナナナ何ィ〜〜!!?」
「え〜〜っ!?マジか!!キャプテン・バギーが"七武海"を抑えての『主犯』!?」
「あんた一体何者なんだ!!?」
「なぜおれに!?」
驚く囚人達をよそに海兵は淡々と話す。
≪名もない一海賊と我々は甘く見ていたが"道化のバギー"…貴様が海賊王ゴールド・ロジャーの船の元クルーである事がわかった!!≫
「!!?」
「………!…なぜバレた……!!」
≪さらには『四皇』赤髪のシャンクスの兄弟分である事も調べはついている!≫
「ん何だって〜〜〜〜〜〜〜!!!?」
「えっ!?パパの兄弟分!!?」
レイリーからは聞いていなかったアスカは父親であるシャンクスの兄弟分だと知り手すりに乗り込んでバギーを見る。
≪それ程の男がよくも今まで際立った事件も起こさず水面下に潜んでいたものだ…ここへきて頭角を現したか火拳のエースとの繋がりは見えて来なかったが…目的は当然"麦わらのルフィ"・"冷酷ウサギのアスカ"と同じくエース救出であろう!その船には"ジンベエ"、"クロコダイル"、"イワンコフ"を始め曲者200人以上の脱獄囚が乗船している事も確認済み……!!忠告しておくがこちらが『正義の門』を開かない限り『マリンフォード』到達はおろかその"タライ海流"から抜け出る事すらできない!!お前達全員には逃げる海も生きる道もない………!!以上だ…≫
「おい!待て海軍!!」
≪!≫
切ろうとした海軍にルフィが引き止める。
「エースは必ず助け出す!!お前ら芋洗って待ってろ!!!」
ルフィが『首』を『芋』と間違えて捨て台詞を言って切ってしまった。
「『首』だよ、バカ…」
「芋洗って煮っ転がしてる場合じゃねェよ!!…――で、何でケンカ売ってんのこの人!『海軍本部』にィ!!!」
ルフィの間違いにアスカは額に手を当てて溜息をつく。
間違いに気付いていないルフィは言い切った、と鼻をならす。
「待てそれよりもキャプテン・バギー!!アンタ海賊王のクルーだったのかっ!!?」
「それにあの"赤髪"の兄弟分!?」
「マズイ…!コレがバレると今後政府に目ェつけられちまうのに!!」
「おれ達の救世主は…やっぱもの凄ェ海賊だったんだ!!」
「何とそういう経歴が………」
「なのにあの弱さか………」
「なのになぜそんなに卑怯なのカネ…!!」
「どんな船にも汚点はあるものねェ!」
バギーの知られざる過去に各々反応違えど驚きは同じで、ルフィはふとレイリーから聞いていた話を思い出す。
「そうか…そういや。副船長のおっさんもそう言ってたな」
「副船長……!?」
「レイリーっていう名前のおっさん知ってるだろ」
「なぬーっ!てめェ…!レイリーさんに会ったのか!!?元気にしてたか!?懐かしいぜェ〜〜〜〜!副船長!!一体どこで…」
レイリーの名前にバギーも囚人達も反応する。
「"冥王"レイリーの名が出たァ〜〜〜〜〜!!すげェ会話だ!」
「キャプテン・バギー!やっぱアンタ恐るべき人物だったんだな!!」
「いやいやちょっと待て!そりゃまァ事実だがあんなデケェ名前乗っけられると今後のおれの海賊人生…」
「すげェぜ!あの伝説の海賊団の一員だなんて!!」
「バギー!!バギー!!」
困っているバギーをよそに囚人達は盛り上がる。
すると困り顔からバギーは悪巧みを浮かんだ表情に変え、態度を一変する。
「キャプテン・バギー!!おれァあんたに付いてくからよ!!指示をくれ!『海軍本部』へ行こうなんて奴らからこの船を奪おう!!そして自由の身になるんだ!」
「!!」
「!」
囚人達が武器を持ちルフィを囲い始めた。
それにアスカは飛んでルフィの背中に着地し、囚人達を睨む。
アスカの睨みもバギーに心酔している囚人達には聞かず、相変わらず武器を高々に上げている。
「さァ"麦わら"ァ!この船を空け渡して貰おう!!」
「せっかく脱獄して『海軍本部』へなんて行かれてたまるか!!」
「こっちにゃキャプテン・バギーがいるんだぜ!」
「頼むぜキャプテン・バギー!!」
「困ったのう…」
「殺せばいいんだ全員」
その様子を見てジンベエは呟き、クロコダイルは静かに殺気を放つ。
するとバギーコールが始まり、囚人達の士気は高まっていく。
「「「バギー!!バギー!!バギー!!バギー!!!」」」
「鎮まれい!ハデバカ野郎共ォ!!!」
「「「!!」」」
盛り上がっていく囚人達にバギーが手すりに上がり囚人達を黙らせる。
「まったく!とんだ酔狂メンだお前ら!!この船はもう止まらねェんだ!戦争のどまん中へ向かってる!!『乗りかかった船』って事もあらァな!ハラァくくってよく考えろ…手を伸ばせば届く距離に世界の"頂点"が首を磨いて現れる!!もう生涯こんな"チャンス"はねェだろうな!…男なら……!おれと一緒に夢を見ねェか…!?」
「!?」
「おれは今日…"白ひげ"の首を…即ち"世界"を取る!!!」
バギーの言葉を聞き、囚人達は感動したのか涙を流す。
「うおお…!キャプテン・バギー!!!」
「ウゥ…!キャプテン・バギィ〜〜!!!!」
「おれ達…地獄の闇に打ちのめされて…!いつの間にか…!!大切なモン失っちまってたみてェだよ!!!あの頃持ってた夢という名の"心の宝石"をよォ!!」
「おれァついてくぜアンタに!平穏な暮らしなんかいらねェ!!」
「そうとも!!いくぞ野郎共ォ!!!いざ『海軍本部』へ〜〜!!!!」
「「「ウオオオオオオオ!!!!」」」
「なんだかまとまったぞ」
「こういう才能はある様じゃのう…」
「なんか疲れた……」
ルフィの背中にいたアスカは力を抜き、ゆっくりとジンベエのところに戻っていく。
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