(267 / 293) ラビットガール (267)

ジンベエとアスカが着くとそこは船着場で肩を落としていた囚人達で一杯だった。


「船が…」

「成程…敵も思う程バカじゃなかった様だな…海底には大型の海王類達……確かにこのカームベルトこそがインペルダウン最大の防御壁だ」

「地獄の底から…やっとここまで這い出てきたのに」

「くそ〜〜〜!!このまままた地獄へ堕ちるんだァ!」

「嘆いている時間はないぞ…この出航はつい先程マゼランから出された指示じゃ」


ジンベエの言葉に驚く囚人達にジンベエは霧の先を指差す。


「よく見ろ…霧の奥にまだうっすらと帆影が見える」

「あ… 本当だ!!で…でもあんな遠くに見えたから何だってんだよ!」

「安心せい!わしがおる!!ここは任せて貰おう……!」


そう言ってジンベエは正門の門の1つを取り外して海に浮かせる。
ジンベエはその扉を背負い、クロコダイル、ダズ、バギー、アスカを乗せた。


「これ!さっき手に入れた小電伝虫!!一応持ってってくれ!!」

「ええか、急ぐぞ」

「うん」

「さっさと走れ!」


ジンベエは海に飛び込み扉を下から支えて進む。


「おおお〜〜〜!!あんなに重い扉持って進んだ!さすが魚人海賊団船長!!」

「何かゾクゾクしてきた!"七武海"の戦闘が見られるなんて!!希望が湧いてきた!」

「しかも我らが救世主!キャプテン・バギーもそれに並んで乗り込んで行く!さすがだ!!」


何故か勘違いを重ね、崇める囚人達は自分達の救世主が乗り込んだ事に感動していた。
しかし真相は…


(ぎゃははは!バカ共め!!そんな場所でマゼランの脅威に怯えるより七武海二人といた方が安全に決まってんだろ!!ブァ〜〜〜〜〜〜カ!!!)


……と、バギーは囚人達が思っている以上にバギーだった。(何だそれ)
すると見つかったのか海軍からの砲弾が海に当たり水しぶきが上がる。


「避けられました!速い!!」

「ただの魚人と思うな!"海峡のジンベエ"だ!!全艦砲撃!ジンベエ一人沈めればやつらは終わりだ!!!」


上司の命令に軍艦からは無数の砲弾が飛んでくる。


「おるわおるわ!軍艦の群れ!!甲板へ打ち上げるぞ!しっかり掴まれ!」

「え!?なな何!?何て言ったんだオイ!!魚野郎!あれ!?消えたぞあんにゃろ!!おれ達を置いて一人で逃げやがったんだ!!」

「大人しくしてろ貴様…」

「………」


ジンベエはそう言って海へ姿を消し、それにバギーが慌てだしダズが顔をしかめ、アスカは両耳の穴に指を突っ込んだ。
暫くするとジンベエが"海流一本背負い"で扉を海流で持ち上げ、軍艦へ向けた。


「え!?何だあの水柱…!!まるで生き物みたいに…!」

「あれは何でしょう……!」

「わからん……!だが人が乗ってるぞ!!クロコダイルと冷酷ウサギのアスカだ!」


4人は扉から降り、無事軍艦へ着地する……バギー以外だが…
バギーは飛び降りたが着地できなかった。


「成程着いた…」

「船を奪いに来たんだ!絶対に渡すな!!」

「能力者は海に落とせばこっちの勝ちだ!!」

「誰を海に落とすって?」

「……っ!!」

「身の程を知らねェ様で…」

「はー!さて、ストレス発散といきましょうか!」


クロコダイルの威圧感に圧倒される海兵を見渡しアスカは久々に暴れられる、と笑顔で海兵達に襲い掛かる。


「ひるむな!放り出せ……ん!?」


3人に狙いを定めた海兵達にジンベエの"槍波"が当たる。
しかし、船にも少し当たってしまい壊してしまった。


「あ!……あーあ…壊れちゃった…」

「オイオイ……」

「おお…うっかりした!その船はわしらが使う船じゃった!!」


アスカとクロコダイルの声にジンベエは謝る。
その後ジンベエが火薬を濡らしてくれて、アスカ達も船に乗ってる海兵全てを海に落とす事に成功する。


「ぎゃはは!よくやったお前ら!!」

「お前なぜ来た…」


気絶していたバギーが全て終わった後気がつき手すりに乗り、アスカ達を褒めたたえてダズに呆れられていた。
アスカはジンベエにアスカが言った方が信用性もあると言われ電伝虫を渡されルフィと通話する。


「ルフィ!生きてる!?」

≪ああ!!生きてる!!大丈夫だ!それよりまだアイツに追われてんだ!!もうすぐ出口で行き止まっちまうよ!≫

「ごめん!船は今奪ったけどすぐにそっちに行くには距離があるらしいの!だけどジンベエが言うには止まるなって!そのまま海に飛び出せって!!全員海に突き落としてもいいって言ってた!!」

≪だけどここは"カームベルト"だぞ!?それにおれ達は能力者なんだけど…≫

「その後の事はジンベエが自分に任せろって…」


アスカの言葉に周りはまだうるさいが、ルフィはジンベエとアスカを信じたのか分かったと言って通話を切る。
通話が切れたあと、アスカは不安そうにジンベエを見上げ、ジンベエは安心させるようにアスカの頭を撫でて海へ目を向ける。
暫くするとアスカ達でも見て分かるほどの毒がインペルダウンの中から現れた。
アスカは手すりの上に乗り、ルフィが無事脱出できるようにと見つめ、ついにルフィ達はイワンコフの頭にしがみ付いて脱出に成功。
ジンベエが呼んだジンベエザメがルフィ達を救い、船に無事乗せる事が出来た。


「ルフィっ!!!」


アスカはルフィが船に乗り込んだ瞬間抱きついてその弾みに海に落ちそうになったがジンベエがルフィの体を支えたので間一髪だった。
それでもアスカはルフィから離れず、ルフィもアスカの腰に腕を回す。


「やったァ〜〜〜!!!軍艦に辿り着いたぞ〜〜〜〜っ!!」

「「「脱獄成功だァ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」」」

「喜ぶのはまだ先じゃ!急いで船を出すぞ!!」


大喜びする囚人達をよそにジンベエは舵を切る。
ルフィ達は助けてくれたジンベエザメに手を振っていた。
イナズマも毒の広がりが早く、イワンコフ達は忙しそうに解毒に取り掛かった。
海軍もジンベエにやられた大砲の整備も終わり再び攻撃を始める。


「うわっ!撃って来た!!」

「コリャやべェ!もう復活した!!」

「何隻いんだよ!艦隊が追って来る!!」


ジンベエが舵をきってくれているといえど一隻に集中攻撃されてしまい、船に当たってしまった。


「おァ!くらった!!」

「中将以上の実力者は全てマリンフォードに召集されとるが軍艦は軍艦!誰が乗ろうと手強いぞ!!」

「無駄だとまだわからんか!!貴様ら海賊の為に!『正義の門』は開かない!!!」


海軍がそういうと目の前に巨大な正義の門が囚人達の前に立ちはだかる。


「そうだ!コイツがあったーーーー!!」

「マズイガネーーーー!!アレは開けられんガネー!!」

「げーーー!!ここまで来て行き止まりだがねーーーーーーっ!!」

「どうすんだ!サメ!!」

「突っ切る!」

「………………」


バギーの問いにジンベエは即答で答える。
ジンベエの言葉にバギーは無理だと言うがルフィの隣にいたアスカは何故か俯いていた。


「まず船を守れ〜〜!!とにかく船をーーーーーっ!!」

「受けてばかりでどうする…こっちも軍艦だ、撃たねェか役立たず共……!」

「おれの提案だがこっちからも撃つんだ!!野郎共ォ〜〜〜!!!」

「了解!キャプテン・バギー!!」


クロコダイルの言葉をあたかも自分の指示のようにバギーは囚人達に指示をだす。
クロコダイルはそれに怒ることなく鼻を鳴らすだけでその場から離れ自分も船を守るため動く。


「囚人共め…!袋のネズミになる事がわかってなぜ『正義の門』へ向かう!?門の開閉はインペルダウン内部からの操作のみ!!それ以外開く術は絶対にない!!」

「撃てェ!!奴らを撃ち沈め……………!?…え?」


進む囚人達に海軍達は一気に沈めようとするが、門がゆっくりと開いていくのを見て目を丸くしていた。


「『正義の門』が…開いていく!?」

「なぜ…!?」

「どうなってるんだ!なぜ門が開く!?」


しかし驚いているのは海軍だけではなく、ルフィ達も目を丸くして開いていく正義の門を見上げていた。


「ど…… どういう事カネ!?罠か!!?」

「……………」

「……………」

「うおおおお〜〜!!やったぞォ〜〜〜!何でか知んねェけど門が開いた!!」


驚いている囚人達の傍らには黙ってしまったジンベエとアスカが門を見上げる。
喜ぶルフィを見てアスカは目を伏せた。
ジンベエとアスカはお互い見合い、ジンベエが重い口を開く。


「ホントか!?それ!!ボンちゃんが…!?」

「…………」


ボン・クレーが正義の門を開いてくれていると聞き、ルフィは驚愕する。


「さっき入口で一緒にいたのに!!ボンちゃん一人インペルダウンに残ったのか!!?おれ達このまま進むのか!!?」

「時間がない」

「…………」

「あいつ置き去りにすんのかよ!!」

「他にも途中倒れた同志達を何百人と置き去りにしてきた!!また戻ってマゼランと戦う気か!!?さらに犠牲者は増える!!時間も失う!誰かが残らねばこの門は開けられんかったんじゃ!!!」


ジンベエの言葉にルフィは返す言葉が浮かばなかった。
悔しそうにするルフィにアスカがそっと無言で小電伝虫を渡した。


「?」

「まだ…ボンちゃんと繋がってる……」

「!」

「小電伝虫の念波は短い…!この門が閉じれば通信も切れるじゃろう…」


ルフィは小電伝虫を手に取る。







その頃ボン・クレーはマゼランに化けて正義の門を開かせていたが本物が現れた為能力を解いてマゼランと対峙していた。


「貴様………!」

「そーよあちしよーーう!!んがーーっはっはっは!!またひっかかったわねーーい!!」

「ニセ者だったのかっ!!」

「あの時顔をメモリーしといてよかったわ!」


2人のマゼランに混乱していたが、ボン・クレーが元に戻ったのを見て看守達は目を丸くしていた。
回るボン・クレーにマゼランは奥歯を噛み締め睨みつける。


「よくも……」

≪ボンちゃん!!≫

「!!」


すると電伝虫からルフィの声が響いた。


≪おい!聞こえてんのか!?ボンちゃん!!≫

「……………」

≪お前また何でこんな事すんだよ!!あん時みたいによォ!一緒に脱獄するんじゃなかったのかよォ!!おれ…!!助けて貰ってばっかじゃねェかっ!!!≫


ボン・クレーはどんなにルフィが声をかけても応えてくれなかった。


「そこにいるんなら返事しろよ!!ボンちゃん!!!」


事情を知った囚人達はルフィと一緒にボン・クレーを呼ぶ。


「そうだったのか…あのオカマの奴…!おれ達の為に一人残って…!!」

「ボンちゃん!!」

「ボンのアニキ!返事しろよ!!」


そのルフィと囚人達の姿をアスカは手すりから見下ろしていた。


≪ボンちゃーん!!≫

「ウ…!!」


管理室にいるボン・クレーはみんなの問いかけに涙を溜め、泣くのを我慢していた。


「Mr.2…!」

「Mr.2!!おめェッて奴ァ…!!なんかゴメンな色々ォ!!」

「ボンボーイ……!」

「ボンちゃーん!!」

「ボンちゃん!!」

「ボン兄〜〜!!!」

「ボンちゃ〜〜〜〜ん……!!」

「ボンちゃん!!門がもう閉まる!!」

≪!≫


電伝虫が息を飲むのを感じた。


「おれ達………行くよ!!ありがとう!!!」

「ボン兄ィありがとよーーーっ!!!」

「ありがと―――っ!!」

≪麦ちゃん!!≫


ボン・クレーが電伝虫に出てルフィも乗り出すように電伝虫に顔を近づける。


「ボンちゃん!!!」

≪必ずアニキ救って来いやァ〜〜〜!!≫

「!」

≪アンタなら……ザザ…かなら…ザー…≫

「ボンちゃーん!!!」

「………っ」


ノイズが激しくなりボン・クレーの声が次第に消えていった。
完全に消えた小電伝虫からはノイズしか聞こえず手すりで見ていたアスカは涙を浮かべ顔を背ける。


「ボンちゃーん!!ボン兄ィ〜〜〜!!!」


声を上げてボン・クレーを呼ぶが門は完全に閉まってしまう。



「残す言葉はあるか!!!」

「本望!」


この時世界最大の海底監獄インペルダウンより脱獄に成功した囚人の数総勢241名…
インペルダウンの歴史上最大の失態となるが事件はまだ終わってはいなかった。

ポートガス・D・エース

公開処刑まで

あと4時間

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